2001.6.1号



 
アカスリ美容法

 わたしは韓国アカスリが好きである。全裸で専用ベッドに寝かされゴシゴシやられるアレである。たっぷりとサウナに入って汗を出してから磨ってもらうとこれまた最高!お肌が一枚生まれ変わったみたいになる。夏なんかだと本当に白くなる。(ウソではない)
その日も、わたしは行きつけの韓国アカスリサウナに出かけた。
「さあ、今日もきれいになっちゃうんだわ」るんるん気分で受付を済ませる。
「七千八百円です」あの満足感を味わうためなら、ケチのわたしだってこれくらいの金額は惜しくない。いそいそと洋服を脱ぎ、まずは浴室へ。自分のアカスリの順番が来るまで浴槽とサウナと水風呂を行ったり来たり・・・この時間もまた楽しい。いっぱい汗をかいておいた方がアカがたくさん出るので、根をつめてねばる。
「オキャクサマ〜」わたしが呼ばれた。さあ、そんなこんなで、いよいよアカスリの始まりである。
 いつものようにベッドに横になるとコリアンの中年女性が身体をごしごし始めた。ちょっとばかりヒフには荒療治だが、もとから肌が丈夫なわたしは大丈夫。自分でこすっても全然だめなのに彼女たちにやってもらうと見事にアカが取れるから、プロの手って不思議である。
すべてをプロフェッショナルのコリアン女性にゆだね、ぼ〜っと目を閉じていると頭上で話し声が聞こえてきた。アカスリベッドはいくつも並んで置かれていて、わたしの担当者と、おとなりの担当が何か喋っているのだった。
「△△△△△・・・!」「▲▲▲▲・・・!」
最初からなんだか険しい喋りっぷりだな、とは感じていた。しかし韓国語の響きはもとからどこかシャープな感じがするものなので意に介さないでいると、それはどんどん激しくなっていった。
「☆☆☆☆・・・!!」「★★★★・・・!!」
あまりの語調の激しさ、これはただごとではなさそうだ。目を開けてみると、なんと二人のコリアン女性が掴みかからんばかりの勢いで喧嘩を始めていたのである。理由はよくわからないが、どうやら内輪もめの様子。裸のわたしを挟む格好で彼女たちのファイトが勃発した。こちらの体を磨る手もそぞろで、気づいた時にはもはやアカスリなど受けられる状況ではなくなっていた。困惑しつつもわたしはモソモソと起き上がり、精一杯の抗議を試みた。
「あの〜、今日はもう結構ですので・・・」なんとかその場を逃げ出そうと思っての発言だったのだが、これがより最悪の事態を招いてしまったようで、
「オキャクサマ〜!ゴメンナサイ」「ダイジョウブ、ダイジョウブ!」などと口々に叫びながら、どこからともなく何人もの女性スタッフが集まってきてわたしを取り囲み、結局わたしは素っ裸のまま羽交い絞めにされて再びベッドに押し戻された。店側はかなり恐縮し、その後も幾度となく謝られながら最終的にはフルコースでアカスリをしてもらったわけだけれど、わたしも女性陣も喧嘩の余韻に神経は張り詰めたっきり、もちろんリラックスなどできるはずはなくいつもの満足感とは程遠いものになってしまった。
帰宅してから体を見ると、お腹じゅうに小さなスリむけ。きっとアカを磨る手に尋常でない力がこもってしまったのだろう。
ここで教訓。“アカスリはするほうもされるほうも万全の精神的コンディッションで” 当たり前のことだけれど、どうかみなさんもお気をつけあそばせ。
プロフィール
おおたわ史絵
内科医、執筆家。
現代人の心理を辛口に分析。
その医者らしからぬルックスも魅力のひとつ。
雑誌 ef NOVARK おとなぴあ など連載中
5/23 リニューアルスタートしたweb Tarzan(マガジンハウス)http://tarzan.magazine.co.jp/ にて新連載開始。みなさんのココロとカラダの質 問にお答えしています。随時更新。
http://www01.u-page.so-net.ne.jp/tc4/fumie/
 
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