2001.11.9号



 
芸術の秋、オトコから教わるキレイの哲学

 芸術の秋!ということで、最近のわたしは舞台鑑賞づいている。
 先日は館形比呂一クンのダンスを観て来た。それもひとりで、こっそり(?)と。
 ソロプレイ2001『ニ短調〜白鳥の歌〜』と題されたそのステージは、いうまでもなく館形クンの一人踊り。出ずっぱりの踊りっぱなし、というハードな内容だ。
 館形比呂一クンを知らない人のために、ちょっと解説。もしかしたら、もとコンボイのメンバーと言ったほうがわかりやすいかな。三十代オトコの本格的パフォーマンス集団として今や大人気で、ライブチケットは軒並み即日完売というあのコンボイである。個性派ぞろいの彼ら、そのなかでもダンスの技術と容姿の優雅さは天下一品、最も光を放つ存在だった彼。当時は館形ヒロという名前で活躍していた。それが昨年あたりからコンボイを離れソロ活動に専念。そして今回のソロプレイに至ったというわけだ。
 実際に彼の舞台を目の前で拝ませてもらって、それはそれは収穫があった。白鳥の歌と題されたとおり、テーマは“迷える一人の青年が白鳥に姿を変え飛翔してゆく”というありがちなものだったけど、選曲はワーグナー、モーツァルトに混じってジミヘンやジャニス・ジョプリンが織り込まれるなど飽きさせない工夫が見られた。
 そして何よりも感慨深かったのは、いうまでもなく彼の踊りっぷり。そうそう、きれいねネットでは話してなかったけど、じつにワタクシおおたわ史絵は中学生時代からジャズダンスを始め、過去にN.Yのカーネギーホールにも出演経験を持つダンスマニアなのでアル。(な〜んてちょっと自慢げ)
 ダンスをかじっている人間として、館形クンの踊りがそれはそれはうまいということは今回の舞台を見る前から充分すぎるほど知っていた。だからどんな高度テクニックが飛び出そうと驚くつもりもなし。なのに、でも、実際には驚かされてしまった。
 なぜか?というと、それはテクニックが凄かったからではない。それどころか逆にテクなんか最小限も最小限、ものすご〜く最低範囲のものしか振り付けに入れられていなかったからなのだ。あんなに素晴らしいダンサーだから、やろうと思えばどんな技でも完璧にこなせるだろう。たとえば回転モノならば、三回転だって三回転半だってできてしまうのは間違いない。なのにあえて簡単な一回転や一回転半を多様。これがワタシ的驚きの根源であり、かつ感動だったのである。
 一般にダンスの商業舞台ともなると、難易度の高い技をてんこもりに入れてくることが多い。観客を驚嘆させようと、「これでもかー!」ってくらい難しいテクを連続で見せつける。たしかにそれを見ると「わー!すっご〜い」という気持ちになるものだ。
 でもこの舞台では、その押し付けがましさが全然ない。そのぶん、できるのにやらないゆとりみたいなものがオーラのように漂っていた。何がすごいって、ここがスゴイ。
 この選択は舞台人にとってかなりの賭けだったと思う。わからない人には「なんか、物足りない」と言われてしまう危険もあるから。にも関わらず、こうした方法を取った館形比呂一というダンサーにわたしはマイナスの美学を見た気がする。
 これはけして舞台だけに限った話じゃない。わたしたちの日常でも、美貌や知識やブランドの持ち物を誇示したがるタイプの女って、どこにも必ずいる。自信があるほど見せたくなるのもわからないではない。
 でも、やっぱりこれって美しくないんだと思う。“脳ある鷹は・・・”じゃないけれど、“できるのにやらない、持ってるのに見せない、知ってるのに言わない”こんなマイナスの女がいたら、逆にきっとすごく光ってみえてしまうんじゃないかな。
 いろんなことを教えてくれたこの舞台、2002バージョンとして1月に東京と大阪で再演される予定。お時間のあるかたはちょっと覗いてみてはいかがかな?
プロフィール
おおたわ史絵
内科医、執筆家。
現代人の心理を辛口に分析。
その医者らしからぬルックスも魅力のひとつ。
雑誌 ef NOVARK おとなぴあ など連載中
5/23 リニューアルスタートしたweb Tarzan(マガジンハウス)http://tarzan.magazine.co.jp/ にて新連載開始。みなさんのココロとカラダの質 問にお答えしています。随時更新。
 

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