2002.1.11号



 
 イイ女の年賀状

 2002年、第一回目の連載である。
 新しい年になったからといって正直これといって目新しいこともなく、ただ淡々と日々は過ぎている(わたしの場合)。今年こそは、お正月用におせち料理を作ろうと思っていたけど、やっぱり何もせずに終わった。年に一度くらいは着物を着ようかとも考えたが、情けないことに一人では着られない事実に気づき諦めた。
 わたしの場合、ただのずぼらに過ぎないが、ここ数年、世の中が便利になるにつれ全体的に“季節感”なるものが薄れてきているような気がする。
 たとえば年賀状。元旦の朝、家のポストまで郵便を取りに行くのが子供の頃の楽しみのひとつだった。山ほどの葉書の束を抱えてきて、それを家族の宛名ごとに仕分けする。自分宛てのものを見つけるとウキウキし、ついつい文章に見入ってしまい、作業は一時中断。
「あ!○○ちゃんから来た」とか「☆☆クンからは来てるかな?」なんて、子供ながらに人間関係のプチ駆け引きを愉しみながら半日くらいかかって整理をするのが好きだった。
ところが最近のわたしときたら・・・年賀状なんてほとんど書かなくなってしまった。大体はメールで新年の挨拶をすませてしまう。アドレスを知らないひとだけはしょうがないので葉書を書くけれど、それもごくごくあっさりとしたものにすぎない。
 そんな折、今年もらった年賀状のなかで、ものすご〜く心が温まる一通があったのでご紹介しよう。その差出人はわたしよりちょっと年上の女性、おそらく四十代になったばかりというところ。和紙製の葉書に自分でハギレ布を貼り付けて、それが絵の代わりになっていた。ありがちな印刷の馬のイラストなんかより全然センスがいい。おそらく風呂敷かなんかの生地を切って使ってあるんだろうけれど、ちょっとした工夫で素晴らしいアイデアだ。(ちなみにこの葉書自体も銀座鳩居堂製だった。この点も重要ポイント)
 ここまでくれば当然、文字もすべて細筆による手書き。文章はほんの二、三行で、くどい文句のひとつもないが、手作り感にほんわか暖かくさせてもらえる一通だった。
 いったい一枚仕上げるのにどれくらい時間をかけたんだろう?そう考えれば考えるほど、細やかなあしらいのひとつひとつがありがたく感じられてくる。
 本来、年賀状は相手の無事を気遣う便り。そして自分の無事を知らせる意味もあったはず。それがいつのまにか単なる慣習のひとつになってしまたんだろう。だから毎年、年末になると
「あ〜あ、年賀状まだ書いてないや。今夜徹夜で書かなくっちゃ。めんどくさ〜い」
 などという台詞が聞かれるわけだ。そこで!遅ればせながら、わたしからの提案、
「じつはもらった年賀状の返事、出しそびれちゃっているのよね」
というアナタ。ここがチャンス!イイ女の腕の見せ所。
 自分なりにほんの少しだけ凝った寒中見舞いでも、作ってみてはどうだろう?
 きっとかけた手間の分だけ相手に伝わるものも大きい、かもしれない。
プロフィール
おおたわ史絵
内科医、執筆家。
現代人の心理を辛口に分析。
その医者らしからぬルックスも魅力のひとつ。
雑誌 ef NOVARK おとなぴあ など連載中
5/23 リニューアルスタートしたweb Tarzan(マガジンハウス)http://tarzan.magazine.co.jp/ にて新連載開始。みなさんのココロとカラダの質 問にお答えしています。随時更新。
 

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