2001.1.5号



私たちの心や身体に、さまざまな効果をもたらす植物の香り。
現在では、医療の現場でもエッセンシャルオイルを使ったアロマセラピー(芳香療法)が取り入れられ、また、ヒーリングのアイテムとして人気が高まるなど、新たに注目を集めています。
では、なぜ私たちは香りで癒されるのでしょうか?
暮らしの中に、どのように取り入れればいいのでしょうか?
そんな植物の香りに関する疑問を探りながら、エッセンシャルオイルの本当の魅力をお届けします。


 ビターオレンジ

ふわっと漂う爽やかで甘い香り
まるで太陽の光を思わせるオレンジは、その鮮やかなカラーと爽やかな甘い香りで、私たちの心を明るく元気にしてくれます。たくさんの花が咲き、実がたわわに実るオレンジの樹は、昔から「豊かさ」の象徴として大切にされてきました。また近世のヨーロッパでは、一般の人々にとって、オレンジは手の届かない大変貴重なものでした。貴族の間ではオレンジを育てる温室を持つことが、ステイタスのひとつだったともいわれています。

現在では地中海地方、アメリカ、日本などで広く栽培されているオレンジ。オレンジピールやマーマレードなど食品としてはもちろん、香水や化粧品の材料に使われるなど、私たちにとって、もっとも身近な果物のひとつになっています。

オレンジの皮にその有効成分がたっぷり
エッセンシャルオイルのオレンジも、その快い香りで日本でも大変人気があります。オレンジの有効成分は、とくに皮の部分に多く含まれています。その皮から抽出されたエッセンシャルオイルが、スイートオレンジ“citrus sinensis”とビターオレンジ“citrus aurantium”。スイートオレンジはベトナム産のものが、ビターオレンジはイタリア産のものが品質に定評があり、含まれている成分内容もその効果もそれぞれ違ってきます。

身体を温め、冷え性に効果的なビターオレンジ
スイートオレンジの特徴的な有効成分は、リモネン、デカナールなど。これらの有効成分は神経系や消化器系の不調に効果を発揮します。具体的には興奮を鎮めて緊張やストレスを和らげたり、胃の不調を改善し食欲を増進させたり。また、ストレス性の便秘や下痢の改善にも役立ちます。

一方、ビターオレンジの特徴的な有効成分はネロール、シトラール、リモネンなど。ネロールとシトラールの2つの有効成分で全体の4、5割を占めます。これらには興奮を鎮めたり、炎症を鎮める作用、さらに体液の循環を促し、活力を増進させる作用があります。その他にも解熱作用や肌を健やかに保つ働きなど、その優れた作用は実にさまざまなのです。

意外に思われる人も多いかもしれませんが、ビターオレンジのもっとも特徴的な効果のひとつは、冷え性によいということ。ビターオレンジは血液とリンパ液の流れをよくして身体を温めるため、冷え性にとても効果的なのです。

フランスのあるカフェでは、木枯らしが吹く時季になると登場する冬季限定のティーがあります。それはビターオレンジの皮とシナモンをメインにしたホットオレンジティーのようなもの。スパイシーな中にほどよい甘さがあり、心までもやさしく暖めてくれるティーなのです。オレンジの風味を味わい、香りも楽しみながら心身ともに温かに・・・、まさに昔の人々の知恵が暮らしの中に根づいているのですね。

オレンジの上手な使い方
オレンジの効果的な活用法をご紹介しましょう。芳香浴でもアロマバスでもご使用になれますが、冷え性対策としてご使用になる場合、一番のおすすめはマッサージです。

マッサージオイルとして
  マッサージオイルの濃度は2%を目安にします。たとえば20mlのキャリアオイル※の場合、最大で10滴までのビターオレンジをブレンドします。

マッサージを行う上で大切なことは、手足の先から心臓へ向かって行うということです。冷え性は、血液やリンパ液の流れが悪くなることによって起こります。とくに末端部へ行くほどその流れが停滞しやすくなるため、手足が冷えるのです。その冷えを改善するには、手足の先から心臓方向へマッサージし、血液やリンパ液の流れをよくすることが必要です。

ご注意: マッサージオイルはつくり置きせず、1回分ずつ使い切るようにしてください。
   
キャリアオイル
ホホバオイル、スイートアーモンドオイルなどの植物油。キャリアオイルの“キャリア”は「carry(キャリィ)」(運ぶ)を表し、エッセンシャルオイルを希釈して「体内に運ぶ」、つまり吸収を助ける働きをする。

アロマバス、フットバスとして
  この場合は、スイートオレンジでもビターオレンジでもご使用になることができます。お風呂に数滴入れてよくかき混ぜてから、入浴しましょう。ただし、エッセンシャルオイルの有効成分は熱に弱いので、適温で行ってください。また、足先の冷えが気になって眠れない時は、ヒザ下を温めるフットバスが効果的です。

ローションとして
  ビターオレンジを使用したローションは、ほとんどの肌質の方がご使用になれます。また、ヘアローションとしてご使用になれば、しっとりツヤやかな髪を保つことができます。とくに、ドライヤーをかける前にご使用になると効果的です。
作り方は・・・
(1) 遮光ビンに無水エタノールを2mlくらい入れます。アルコールが苦手な人はご使用にならないでください。
(2) そこへビターオレンジを、7、8滴入れます。
(3) さらに精製水8ml(アルコールフリーの方は10ml)を加えて、よく混ぜれば出来上がり。

ご注意: アルコールは酸化防止のためと、エッセンシャルオイルと精製水を混合させるために使用します。アルコールフリーの場合は、出来上がったローションをご使用になる前によく振ってください。また、ローションは3ヵ月以内に使い切るようにし、アルコールフリーの場合は1ヵ月以内に使い切るようにしてください。
  また、オレンジをはじめ柑橘系には光毒性があり、皮膚に塗ってすぐに直射日光を浴びるとシミになる恐れがあります。真夏など紫外線が強い時期のご使用には、くれぐれもご注意ください。

手足の冷えがとくに気になる今の時季、お休み前のマッサージやフットバスなどビターオレンジを生活の中に上手に取り入れて、この季節を元気に乗り切りましょう。
 

<次回は…>
リフレッシュ効果や腰痛、肩コリにも力を発揮する“ローズマリー(カンファー)”をご紹介します。


(いのぐちあきこ)

■取材協力/ 植物療法研究家・森田敦子さん
  日本アロマセラピー学会会員。
フランスで植物療法を学び、帰国後、信州大学において有機系天然抗菌剤の研究、ディフューザーの開発などに携わる。
1998年サンルイ インターナショナル設立。
現在は、大阪大学におけるアロマセラピーの研究に参加、また、さまざまな施設へのアロマセラピーの提案、人と環境にやさしい商品開発など、植物療法家として活動中。
■参考資料/ 「アロマテラピー完全マニュアル」草隆社
「アロマテラピーのための84の精油」フレグランスジャーナル社

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