2001.3.2号




さまざまなストレスにさらされることの多い毎日。クタクタになったあなたの心と身体が、もう限界と悲鳴をあげていませんか。そこでおすすめしたいのが、東洋では古くから健康法のひとつになっている「腹式呼吸」。心身の調子を整えるといわれ、とくにそのリラクゼーション効果が注目されています。ところが「腹式呼吸」は難しそうという印象が強く、興味はあるけれど敬遠してしまうという人も少なくないようです。そんな方のために「腹式呼吸」の効果の秘密を探り、はじめての方でも手軽にできる呼吸法をご紹介します。

心と身体の状態をあらわす呼吸

“息がつまる”“息をのむ”“息抜き”など、ふだん何気なく使っている言葉の中に、心身の状態と呼吸(息)が結びついている言葉がたくさんあります。驚きや怒りで感情が高ぶると呼吸が早く息苦しくなり、身体もガチガチに。反対に気持ちが落ち着いていると、呼吸もゆったりとし身体もラクに。つまり、心のありようと身体と呼吸は非常に密接な関係にあるのです。ということは見方を変えれば、呼吸をコントロールすることで心身の調子を整えることができるというわけです。その呼吸のコントロールを取り入れている東洋の健康術がヨガ、太極拳、気功などです。


腹式呼吸とは横隔膜呼吸のこと

私たちが通常行っている呼吸は胸式呼吸といい、おもに胸郭の中にある肋間筋の運動により行われます。一方、健康法の呼吸は腹式呼吸。お腹をふくらませて息を吸い込み、お腹を引っ込ませて息を吐き出しますが、実際は横隔膜の上下運動による呼吸のことで、横隔膜呼吸とも呼ばれています。


心身のバランスをとり、冷え性や不眠にも効果

腹式呼吸を行うと横隔膜の運動範囲が広がり、人によっては胸式呼吸時の3、4倍になることも。腹腔の内圧もグンとアップし、その刺激を受けて胃腸の働きが活発になり、消化機能が改善されます。また腹筋も鍛えられるので、腰痛予防にも役立ちます。その他、停滞していた静脈の血液の流れもよくなり、冷え性にも効果的。

健康な人は交感神経と副交感神経のバランスが保たれていますが、ストレスなどでそのバランスが崩れると自律神経が乱れ、動悸、めまい、頭痛などさまざまな症状があらわれます。その自律神経をコントロールできるのも腹式呼吸。人の身体は筋肉が動くと筋肉内のセンサーからその刺激が脳へ送られます。横隔膜もそうしたセンサーを備え、深く大きな呼吸で横隔膜が動くとその刺激が大脳へ送られ、さらにそれが視床下部へ伝達されます。視床下部は自律神経と深く関わりのあるところ。その刺激により、自律神経が調整されると考えられています。つまり、腹式呼吸により心身の調子が整い、心身ともにリラックスすることができるのです。ホルモンの関係などで自律神経が乱れやすい女性には、とくにおすすめ。ちなみにこれを日課として以来、私の母は便秘と不眠が改善されました。


自分をみつめる、それには呼吸を意識することから

いいことづくめの腹式呼吸ですが、なんだか難しそうというイメージを持っている人も多いのでは。確かに一口に呼吸法といっても実はいろいろな流派があり、それを習得し、ある程度の効果を得るにはやはり時間と根気がいります。でも少しでもよさを知りたい…、手軽にできる方法があれば…、そんな方のために、はじめてでもできる呼吸法をご紹介しましょう。

はじめての場合は座って行います。立ったままでも横になった状態でも構いませんが、座った姿勢がもっとも下腹を意識することができます。はじめのうちは目を閉じながら、また下腹に片手を置くと行いやすくなります。呼吸は自然呼吸でOK。


(1) 背筋を伸ばして、アゴを少し持ち上げてなど技法にこだわりがちになると、かえって身体に力が入ってしまい、本来の呼吸法ができなくなります。そんな時は無理に身体の力を抜こうとせず、精神を集中し、自分を見つめる(内観)、具体的には身体の内部を見つめるという感覚を持つことが大切。

(2) 次に頭のてっぺんを天に引っ張られるような意識を持ちます。そうすることで自然と背筋が伸びます。

(3) その状態のまま今度は地を、おへその下あたりにある丹田(たんでん)を意識します。丹田は東洋医学において、エネルギーの源である“気”が集まるといわれる重要なツボのひとつ。まず自分を見つめるという感覚を持ち、さらに丹田に意識をもっていくことで、自然と身体の力が抜けていきます。

(4) 次にふだん無意識に行っている呼吸を、“吸って吐いて”を意識します。この時にノドや鼻を意識しがちですが、あくまでも気持ちは丹田に置きながら。深くゆったりと呼吸し、吸う時も吐く時も遠くを意識して吸い切り、吐き切るように。それを繰り返し行います。


電車の中やお休み前のひと時に

それでもわざわざ時間を作って行うのは面倒という方におすすなのが、お休み前のひと時を利用すること。呼吸法は本来、座って行うのがベストですが、私と母は布団の中で仰向けになった状でエッセンシャルオイルのラベンダーを漂わせながら、広い空間に身をゆだねるような感覚で行うと、次第に身体が暖まり気持ちがシーンと落ち着きます。もともと寝つきのよくない母も、そのままスーッと眠りにつくことができるそうです。時間は一日15分くらいが基本ですが、いざ15分間続けるとなると意外と長いもの。ですから時間や姿勢にはあまりこだわらず、電車の中やくつろぎタイムに、また音楽をかけながらなど、まずはやってみようと思った時に好きなように行ってみましょう。

(いのぐちあきこ)

■取材協力/ 守屋佳通 鍼灸師
鍼灸師。心と身体の関わりを捉え、心からのアプローチを重視した治療を追求中。この春、開業予定
■参考文献/ 「呼吸の奥義」永田晟著 講談社


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