2001.10.5号



 自然の恵みがたっぷり含まれた旬の素材の味は格別。味だけではありません。旬の素材には、そのとき私たちが必要とする栄養分が豊富に含まれているのをご存じですか?食卓に季節感のある食材を取り入れることは、心を豊かにしてくれます。食べておいしく、そして内側から美しくなれる。そんな旬の素材が持つ魅力に迫ります。

 柿 Kaki

柿は日本古来からの食べ物
 秋の夕暮れ。赤く熟れた柿の実や、軒先につるされた干し柿は、私たちをどこか懐かしい気持ちにさせてくれます。柿の学名は「ディオスピーロス・カキ」。
ディオスピーロスとは「神から与えられた食べ物」という意味です。
 柿は甘いモノが乏しかった時代には貴重な果実で、日本人には大変なじみの深いものでした。そのため地方では今も、柿に関連した昔話や伝説が語り継がれています。
 柿の歴史は奈良時代までさかのぼります。東アジア原産で、奈良時代(710〜784年)に中国揚子江流域を原産とする野生種が渡来し、根付いたとされています。品種は世界で1000種以上あり、果実の形状も大きさも変化に富んでいますが、主に甘柿渋柿に大別されます。そして、渋の抜け方により、完全甘柿不完全甘柿完全渋柿不完全渋柿に分類されます。一般に甘柿は気温が低いと渋が残るため、気候が温暖な中部以南で作られ、渋柿は耐寒性がやや強く東北地方まで栽培されています。柿は早いものでは9月下旬から出荷されますが、お店に多く出回るのは10月から11月いっぱい。それ以後のものは、さまざまな方法で貯蔵された柿になります。

柿の渋みの正体はタンニン
 柿の渋味はタンニン物質であるシブオール。渋いかどうかは柿に含まれるタンニン物質が水溶性のままか、不溶性に変わっているかで決まります。タンニンが水溶性であれば、だ液に溶け、口の中のタンパク質と結びついて強烈な渋味を感じます。甘柿の場合、熟してくるとタンニンが不溶性に変わり、タンパク質と結びつかなくなるため、渋さを感じません。
 不溶性のタンニンが酸化すると、果肉にゴマと呼ばれる褐色の斑点が見られます。このゴマが多いほど、甘い柿と言われていますが、最近はゴマがなくても甘い柿が出回っています。

ここで家庭でも簡単にできる柿の渋の抜き方をご紹介しましょう。
(1) 大きなビニール袋と古新聞、アルコール35度以上の焼酎を、柿10kgにつき100cc準備します。
(2) ヘタの部分にアルコールをつけ、新聞紙の上にヘタを下にして並べます。その上にまた新聞紙を重ね、同様に柿も並べていきます。
(3) 最後に新聞紙をかぶせてビニール袋に密封し、日の当たるところで3〜5日ほど置いておきます。
 
少量の場合、器に焼酎を入れ、柿のヘタの部分を一瞬つけてからポリ袋に入れ、中の空気を出して密封します。3〜5日で渋柿が甘くなります。
品種によって渋の抜けにくいものや、皮が変色したり、品質が低下するものもあります。

柿1個でみかん3〜4個分のビタミンCがとれる
 古くからさまざまな薬効を持つことで知られている柿は、現代人の強い味方。柿1個に含まれるビタミンCは温州みかんの3〜4個分に相当します。さらに詳しく説明すると、柿にはビタミンCができる前の物質、プロビタミンCが豊富に含まれていて、それが体内に吸収されてビタミンCとなって働くのです。
 大きめの柿を1個食べれば、1日のビタミンCの必要量を摂取することができます。ビタミンCは風邪の予防や美肌効果があるばかりでなく、老化の進行や免疫力の低下を防いでくれます。夏の疲れた体を癒すのにピッタリな食材といえます。
 さらに、免疫機能を高め病気の予防ができるカロチン、発ガン物質やコレステロールの排泄を促す食物繊維ビタミンAが多く含まれています。

 アルコールを飲み過ぎたときにも柿が威力を発揮します。カリウムには利尿作用があり、むくみや二日酔いに効果があります。また、柿に含まれる糖分がアルコールによって低下した血糖値を回復させ、渋みの原因物質であるタンニンがアルコールの吸収を抑えてくれるからです。お酒を飲む前に1〜2個食べると、悪酔いを防ぐとも言われていますので、飲む前に試してみてはいかがでしょうか?

民間治療にも使われる柿の葉
 柿の秘められたパワーは葉にも潜んでいます。最近は健康のために「柿の葉」が使われる例も珍しくありません。
 柿の葉にはレモンの20倍ものビタミンCが含まれているため、柿の葉茶として飲用すると内出血の止血作用があり、のどの炎症にも効き目があります。柿の葉をホワイトリカーで漬け込んだお酒には、脳卒中、かっけ予防、滋養強壮、皮膚の健康にいいとされています。柿の葉は抗菌作用もありますので、おにぎりを包んだり、柿の葉寿司に使うことにも適しています。

柿の選び方と保存方法
 柿の固さや甘さの好みも人によって千差万別。万人好みの柿を選ぶのは容易なことではありません。「富有はあごで食べ、次郎は歯で食べ、種なしは舌で食べる」と言われています。購入する際の一般的な目安としては、実が固めで、ヘタが緑色のものが良質です。ヘタがしっかりしているうちが新鮮な印です。触ってみて、ほんの少しゆるみができた状態が食べ頃です。
 保存は袋を密封して冷蔵庫に入れておきます。これで約一週間、保存可能です。皮と実の間には渋味が残っていますので、皮をむいて食べるようにします。

柿の種を切らずに分けるコツ&レシピ
 あなたは包丁で柿の種を切ってしまうことはありませんか?柿には果肉に4つのスジが入っているので、それに沿って切ると、中の種を切らずに切り分けることができます。スジが分からないときには、ヘタのくぼみに包丁を入れてもOKです。
 柿は生食で食べるのがポピュラーですが、組み合わせ次第で和え物やサラダにすると美味。忙しいときでも簡単にできる「柿とリンゴのサラダ」はライターのイチ押し。柿とリンゴをイチョウ切りにして干しぶどう、マヨネーズ、レモン果汁を加えて混ぜるだけ。柿とリンゴの食感と甘さの違いが際立つサラダの完成です。

(石亀佳代子)

writer's eyes
 近所のスーパーで、柿は外国産の果物に押されて、隅の方に並べられていました。外国産の目新しい果物もいいけれど、柿の魅力も捨てがたいライター。誘惑に負け、ついついどちらにも手が伸びてしまいます。あらゆる食材がおいしい「食欲の秋」が今年もやってきました。

■取材協力/ 杉本恵子先生
  管理栄養士 ヘルスケア・アドバイザー。130人の管理栄養士をネットワークし、栄養管理・アドバイザー事業を担う(株)ヘルシーピット主宰。
ヘルシーピットHP:http://www.healthypit.co.jp
■参考文献/ 『サライ』(1998/11/5月号)



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