銀色に輝く力強い容姿は鯛に続く美魚といわれるほど。ボリューム感のある身質、さっぱりとしながらもコクのある風味。刺身にすればコリッとした歯ごたえを楽しめ、

煮たり、焼いたり蒸したりと加熱調理を施せば、ふっくらやわらかに仕上がります。まさに、“煮ても焼いても食えるヤツ”というわけです。
今日の鱸は大磯で揚がったのもので1.9キロ。体長70cmくらいあります。贅沢な味わいを丸ごと一尾楽しみ尽くそう、というのが今回のテーマです。
部位、手法別に刺身を味わい分ける |
まずは刺身です。写真は左から「あらい」、「湯あらい」、「腹の身」、「背の身」、その手前が「鰈(かれい)」の5種。(鱸の身質をより鮮明にするための鰈一切れ。噛みごたえのある、しっかりした弾力。さっくりと歯が入る鱸とは、対照的)同じ鱸でも、場所によって、また手法によって、こんなにも味が違うということを知るためのテイスティングプレートというところでしょうか。
プロセスは以下の通り。3枚におろした身を中骨をとりながら、背と腹に分け、5枚におろします。背の部分の頭1/5と尾1/3くらいは、繊維が硬いので、お刺身用には使いません。真ん中の最もやわらかいところを、柳刃包丁で、皮からすき取るように、そぎ切りにします。
その一切れずつを、まず「あらい」にします。あらいとは、氷水の中でさっとふり洗いして身を締める手法ですが、食感はもとより、氷の上に盛り付けるなど、夏の清涼感の演出としても昔から好まれてきました。氷水で5秒ほどふり洗いするだけでキュッと締まった歯ごたえが楽しめますからぜひ試してみてください。これは、白身魚にはATP(アデノシン3リン酸)という物質が多く含まれていて、これに筋肉を引き締める働きがあり、冷水で刺激することによって、筋肉が収縮して身が締まるのです。これに対して、赤身にはごく少量しかATPが含まれていないため、鮪のあらいは存在しないわけです。

もう一つは「湯洗い」。やや厚めに切り、熱湯にさっとくぐらせて氷水にとり、2〜3分芯まで冷やし、水けをしっかりきって、盛りつけます。これらを今回はひとひねりして、酢味噌でいただこうという趣向です。わけぎと一味を添えた酢味噌が、甘みのある肉質を引き立てます。酢味噌は、西京みそ大さじ山盛り3、和からし小さじ山もり1を混ぜ、甘酢でヨーグルトくらいの固さにのばしたもの。生姜、みょうが、大葉、きゅうりなどたっぷりの薬味は、鱸の個性を生かすには必須です。
また背と腹の風味、肉質の違いも注目!さっぱりと小気味よく歯切れのいい背側。しっかり脂がのり、むっちりと弾力に富んで、コクも甘みある腹身。「ね、まるで違う肴みたいでしょう」、という杉山さんの言葉に納得。今度から、魚屋さんにお刺身を頼むときも、腹身を指定すると一層その持ち味が楽しめるでしょう。
鱸の身質をより鮮明にするために鰈を一切れいただきました。こちらは誇張してたとえればゴムのよう。より噛みごたえのある、しっかりした弾力が身上。さっくりと歯が入る鱸との最たる違いはその辺りです。

煮もので楽しむ浮き袋とあら
次なるお楽しみは、鱸の浮き袋。これは古くから珍味中の珍味として愛されてきたものなのだそう。写真のように指を入れると、中が空洞になっているのがわかります。一尾の魚で浮き袋がこれだけ大きく発達するのは、浅瀬から深いところまでを活発に移動するからでは、とは杉山さんの推測。ただし、鱸自体の鮮度も質もよくないと臭みがあってとても使えないとか。今日の浮き袋は完璧です。これをあらと一緒に、しょうゆ、みりん、砂糖、酒で、ややしっかりめに味つけし、表面にからめるような感じでさっと煮付けにします。
写真は左奥のあらから時計回りに、浮き袋、鯛の真子、鯛の白子。白子と真子は嬉しいおまけです。ゼラチン質を多く含むような、くにゃっと弾力のある浮き袋の食感はやみつきになりそう。しかしながら絶対量が少ないため、ごく上客がきたときだけに出す珍味という杉山さんの言葉も頷けます。
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