銀座寿司幸本店のカウンターを囲んで固唾を呑む“観客(私)”の前で、薄紙にくるまれた鮪の塊が登場しました。上には「大間産179kg
丸抜」と書かれた1枚の紙片が鎮座。水戸黄門の葵の御紋か、はたまたダイヤモンドの鑑定書か、泣く子もだまる、大間ブランドの証です。今や、寿司通であろうとなかろうと、誰もが知る鮪の名産地。ブランドとして最大級の付加価値を持った水揚げ漁港の名前です。回遊魚である本鮪は、台湾周辺で産卵した後、日本近海を日本列島に沿うようなかたちで餌となる秋刀魚や鰯、烏賊(いか)などを追って成長しながら北上していきます。秋も深まる頃になると、しっかりと脂を蓄えた鮪がちょうど青森・大間のあたりを通過するのです。それを1本釣りにて釣り上げるのが大間の鮪。網で大量に捕獲するのとは異なり、ダメージが少なく、旨みが最大限に生かされます。それゆえのブランド価値なのです。
普段は、お寿司屋さんに行ったところで、さくどりする手前の段階のブロックにお目にかかれるのがせいぜいです。そこで、「なるべく原型に近い形で鮪を見てもらい、さまざまな部位を食べ尽くしてもらいたい」と杉山さん。そのために「1週間前から鮪屋の社長にプレッシャーをかけて、最高のを持ってきてもらったんです」と、胸を張ります。
鮪の中でもおいしい部位、腹上とかま |
薄紙の中から現れた勇姿は、鮪の部位の中でも一番高価とされる腹上の部分です。つまり、鮪の腹側の方の身で、かまに続く部位です。かまより下の鮪の身は、カミ、ナカ、シモと3つに分けられるのですが、上にいくほど、脂がのっていて、高級とされます。
肉質が緻密でずしりと重く、大人2人で持ち上げるのも大変。裏から見ると、白く光る表皮がよく見えます。写真では右側の暗褐色の部分が血合い。本来その外側に背骨がついています。写真奥がかまの部分。左手で持っているのがエラです。表面に見える白い膜に守られ、その内側には本来内臓が位置します。
下の写真が、それらの身の部分をきれいに切り落とした骨。頭から尾まで、つなぎ合わせると見事。こんなにデカイ!のです。
さて、いつになく力の入った、そして長いプロローグでしたが、いよいよ、待ちに待った、鮪の宴の始まりです。「鮪の身質はヘモグロビンが多く、血っぽいのが特徴。ということはつまり、タンニンとの相性がよい。だから一番合うのは上がり、つまりお茶。でも、タンニンということで、赤ワインとの相性も非常に自然です」と杉山さん。ただし、最初の二品は脂の少ない部位から始めるので、敢えて白ワインを合わせてみましたとも。ワインとのマリアージュも必見です。
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