2001.1.26号



わたしたち日本人の生活に欠かすことのできない緑茶。
身近すぎて、ついその効能を見逃しがちですが、豊富なビタミンC、カテキン、カフェインなど美肌にも、健康にも効果大。そして今、その爽やかな味わいと効能は世界でも注目を集めています。


 神話の世界の昔から、飲む薬として尊ばれてきたお茶

中国の伝説によれば数千年の昔、農業の神様「神農」が木陰でひと休みしているときに、ひとひらの葉が舞いおりてきてお茶になったとか。茶の樹は中国の雲南省から四川省にかけての山岳地帯がルーツであるという説が有力です。先史時代、生葉をそのまま噛むことから始まったお茶は、時代を経て煎じ薬のように用いられ、紀元前後から飲料として用いられるようになりました。日本へ伝えられたのは遣唐使が往き来した奈良、平安時代の頃。お茶に関する日本初の書物『喫茶養生記』の中にも「茶は養生の仙薬なり、延命の妙術なり」と著されています。先人たちはそれほど茶の効能を知り、尊んできたのです。



 お茶の分類 ― 不発酵茶、半発酵茶、発酵茶

日本では、日本茶(緑茶)、中国茶、紅茶は別のカテゴリーの飲み物と考えられていますが、いずれも学名「カメリア シネンシス」というツバキ科の植物、茶樹の葉を加工したもの。実はすべてのお茶はそのルーツをたどると中国に行き着きます。それが製造の過程で、ほとんど発酵させない「緑茶」、半分発酵させた烏龍茶に代表される「中国茶」、完全に発酵させた「紅茶」に分かれました。そしてそれぞれが製造され、消費されてきた土地の歴史や文化の中で、姿・味・香りの違いが際立ち、現在に至っているのです。私たち日本人が日本茶として口にしているものは、煎茶であれ番茶であれ、または抹茶であってもお茶という大きなくくりの中では不発酵の緑茶、つまりグリーンティーのグループに属します。



 ビタミンCの含有量抜群の緑茶

生の茶葉はビタミンA、C、Eを豊富に含んでいます。加工の過程で消失してしまうものもありますが、不発酵の緑茶はそれらをほとんど生葉に近い状態で保っています。特にビタミンCの含有量はレモンの4倍。その上、緑茶の中のビタミンCは熱にも大変強く、80℃のお湯でもこわれません。
煎茶や玉露などはぬるめの湯を注ぐのがおいしくいれるコツですが、ビタミンCの摂取を考えても理にかなっているようです。そして美肌作りに欠かせないビタミンCは、同時に疲労やストレスに強い身体を作るのにもとても大切。身体の内から“きれい”を作り出します。残念ながらビタミンAとEは脂溶性なので、水分中には抽出されず茶殻に残ってしまいますが、抹茶なら一挙両得。昨近はやりのお茶のふりかけなど、茶葉ごと食べるものもビタミンA、Eまで残らず摂取できます。



 渋みのもとカテキンで老化防止

お茶の大切な風味のひとつである渋みを形成するのが、カテキンというタンニンの一種です。この物質は抗酸化作用をはじめ、抗菌作用、抗ウイルス作用などさまざまな効能を持っていることが近年の研究で解明されてきました。酸化とは、活性酸素(フリーラジカル)を生成する行為、平たくいえば老化のもとです。カテキンはこの活性酸素が脂質と結びついて過酸化脂質になり、体内に蓄積するのを防ぎます。お茶好きには長寿が多いというのはまさに一理あり。またお茶でうがいをすると風邪の予防になるというのも、カテキンの働きのよい例です。



 お茶でダイエット

気分をリラックスさせたり、頭をすっきりさせてくれるのが、ご存知お茶に含まれるカフェインの代表的な作用ですが、同時にカフェインには、体内で脂肪が燃焼するのを早める作用があり、ダイエットにも効果的であることがわかってきています。またお茶に含まれるタンニンには腸の蠕動運動を盛んにする働きもあります。ダイエットの大敵、便秘にはぜひお試しを。もちろん砂糖もミルクも必要としないノンカロリー飲料であることは、ダイエットにはなによりの心強い味方です。



 世界に広がる緑茶の魅力と効果

今や緑茶は日本の専売特許ではありません。ニューヨーク、パリ、ミラノなど世界の大都市ではすでにその爽やかで深い味わいが認められると同時に、美容、健康効果も、インテリジェントな層からは強い支持を受けています。
例えばニューヨークでは、グリーンティーも「茶=ティー」という大きなカテゴリーの中のひとつのバリエーション。今日はダージリン、それともグリーンティー?というようにお茶をグローバルに楽しむことができるティーサロンが増えています。また、日本でもすでに紅茶やコーヒーに果物や花の香りをつけたフレーバーものは人気ですが、同じ考え方で緑茶のフレーバーティーも人気が出始めています。写真は桜の花の香りをつけた緑茶。エキゾチックでスノッブな雰囲気が人気のNY・ソーホーにある「T salon」のオリジナル商品です。
一方、緑茶のビタミンCやカテキンなどの成分を抽出した錠剤も、ビタミンショップなどで売られ、ヘルスコンシャスな人々の間で愛用されています。また世界のセレブ御用達の香水専門店「CREED」では、緑茶とブラックカラント※をブレンドしたオリジナルのパフュームが高い人気を誇っています。清々しいばかりでなく、緑茶の香り成分でリラックス効果も高いとか。このようにデイリーな飲み物としてだけでなく、さまざまな角度から緑茶の魅力が抽出され楽しまれています。遠からずそうした緑茶の魅力が日本へも逆輸入され、再確認されることでしょう。
※ブラックカラント: ベリー類の仲間。黒すぐりの実。甘酸っぱい味わいと豊かな香で、ジャムはもちろん、フレーバーティーやポプリ、フレグランスなどでも人気。



小松宏子) 

writer's eyes
NYに居を移して2カ月半。初めはNY的なもの、アメリカ的なものにばかり目が行きましたが、今回の取材で改め街を見回してみると、そこここに緑茶のエッセンスがあふれているのに気づきます。健康、美容上の理由から、オリエンタルな雰囲気を求めて…、と緑茶を好む理由は人それぞれですが、緑茶=ソフィスティケイトされた飲み物と見なされていることは肌で感じました。



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