2001.2.9号




 「この春全成分表示の義務化でコスメティクスの世界が変わります!」
最近、そういった主旨の文章をよく見かけます。それもそのはず、今化粧品をめぐる法律が大きく変わっているのです。
いったい何が変わるのか、2回に分けて詳しくお伝えいたします。


 化粧品に入っている成分、全部公開します

 化粧品は、厚生省の定める「薬事法」という法律の下で管理されています。
その法律の中で「2000年4月から1年間の間に、化粧品のパッケージ表示を変えなさい」と改正したのが、今回の「化粧品全成分表示」義務化なのです(実際に変わるのはタイムリミットぎりぎり、今年の3月が多いようです)。
 具体的にどのように改正されたのか、表で見比べてみましょう。


今までのルール これからのルール
化粧品の成分を消費者に公開しなくてよい。「肌に刺激を与える可能性がある」成分102種のみを「表示指定成分」としてパッケージに記載。

(例)瓶の裏をみると「表示指定成分 パラベン」などと、特定の成分が書いてある。
化粧品に入っている成分すべてを、パッケージなどに記載する

(例)水、アルコール・・・など、配合量の多い順に全ての成分が書いてある

※例外として、認定された企業秘密製品と香料成分、原料を守るための極微量の成分は表示しなくてよい
化粧品を製造・輸入・販売するためには、事前に厚生省に種別ごとに認可をもらう必要がある。 事前の認可がなくなる。化粧品メーカーが自分の責任で製造・輸入・販売してよい。
(安全性のために、「これは入れてはいけない」という成分リストと、「効果はあるけど扱いに気をつけて」というリストがあり、それを守る必要はある)
「ポジティブリスト」という“使ってよい成分”一覧があり、その中にあるもののみが成分として認められた 「ネガティブリスト」という、“使ってはいけない成分”以外のものは、何でも使ってよい。(ただし、配合を制限されているものや、取り扱いに気をつける成分リストはあり)

みなさんはこれをご覧になってどう思いましたか?
「全部表示されるから、ごまかしがなくて安全!」という気もしますし、「厚生省の認可なく新しい商品が売られるわけだから、危険だよ・・・」と思われる方もいらっしゃると思います。
結局のところ、私たちにとっていいことなのか、悪いことなのか? 以下、メリットとデメリットを挙げていきましょう。


メリット1
「低レベルなごまかし商法がなくなる!」


例えば右のパッケージ。誰がどう見ても、「添加物一切なしの、スクワラン100%エキスだ」と思いますよね。
 
無添加・植物由来
ピュア100%原液
スクワラン
でも今までの薬事法下では、そうではない場合があるのです。
例えば、100%ピュアなお水にスクワランを1滴落とし、いろんな防腐剤などを添加した商品でも、このようなパッケージをつけることができます。
“無添加”というのは「表示指定成分」無添加であり、“植物由来”というのは「オリーブからできたスクワランを1滴使っている」、“ピュア原液”というのは水のこと・・・・・・。法律的には十分、言い訳が立ったのです。

でも、法改正後は中身が全部表示されるので、何がどう入っているのかはっきりします。植物由来の無添加といっても、実際にはいろいろな化学薬品が添加されていることが多いのです。
このように、イメージだけで消費者をごまかすことは、今後できなくなります。

メリット2
「自分にとって合う製品がわかる、国際スタンダード」


薬事法が制定されたのは50年近く昔のこと。
それから化粧品の世界は日々進歩し、毎年多くの新成分が開発されています。それなのに表示される成分は102種のままってなんだか変。もしかしたら新成分の中には自分にとってすごく相性の悪い成分があるかもしれないのに・・・・・・。
これからは、そういう疑問はなくなります。香料成分を除いて全てが表示されるので「UV-カットクリームに含まれているウールアルコールは、なんだか私と相性が悪いみたい」というのが、いくつかの商品を使っているうちにわかってきます。
また、欧米ではすでに全成分表示がスタンダード。表記が日本語でない、というハンデはあるものの、基本的には日本の商品と輸入化粧品が、同じようにチェックできます。
よく、半額以下で購入できる空港の免税店で「海外コスメは、何が入ってるかわかんないし私には成分が強いんだよね・・・・・・」と泣く泣く諦めている人がいますが、これからは「○○と△△が入っていなければ、私の肌にあうだろう」と事前に判断する目を養うことができます。

メリット3
新製品が早く手に入ります!


今までは、新製品や輸入品を売る前に、いちいち認可をうけなければいけませんでした。つまり、アメリカで大ブレイクした超人気コスメを試したくても、正式ルートで買おうと思うと少し遅くなってしまうのです。でも今なら、許可をうけた業者の販売で、成分が「ネガティブリスト(配合してはいけない成分)」等にひっかからなければすぐに手に入るというわけ。コスメティクス好きには、とてもうれしい制度です。

デメリット1
消費者に知識が必要となります


今まで、パッケージ裏をみてパラベンなど指定成分の表示が少ないものを「安全の目安」にしていた人、意外と多いのではないでしょうか? これからは、そういったことができなくなります。どんなにナチュラルな商品でも、実際はいろいろな成分を配合しているため、見た目はどれも「化学成分の名前がぎっしり」。いいものか悪いものかを見分けるのはけっこう大変かもしれません。

デメリット2
今までの表示指定成分が、こっそり紛れ込んでいる恐れあり!


「全成分表示」といいますが、そもそも「成分」というのは以下のようになっていることが多いのです。
 

キャリーオーバー成分とは、その原料を守る防腐剤とか酸化防止剤とかのことで、なんと今後はパッケージに表示しなくても良いのです!!
今まで、どんなに小量でもパラベンを使ったら記載されていたのに、今後は表示されない・・・・・・。びっくりですよね。
(制度的には、「化粧品全体の防腐目的ではなく、原料の防腐目的のため」に加えられた場合を「キャリーオーバー」と呼び、「商品全体の防腐のために」加えられた場合は表示が義務となります。具体的に何%以上なら表示、という決まりはないそう。)

デメリット3
「成分」は情報開示のほんの一部。まだまだわからないことはいっぱい。


デメリット2のところで説明したように、「成分」になる前の原料に何が行われているかは、企業秘密がからむこともあり、法改正後も公開されません。
例えば原料臭を消したり、良い香りをつける香料。化粧品会社は基本的に香料会社から香料を買い付けていますが、その香料(6000種類もある!)に何が含まれているかは知ることができません。
また、化粧品の有効成分が肌の奥に浸透するためには、分子量が5万以下(ビジュアルでは想像できませんが、とにかく質量が軽く、粒が小さいということ)である必要があります。物質を細かい分子にしていくことを「コロイド化」といい、そこに力を注いでいるメーカーは「うちの製品は、精製された高品質な原料と高い技術を使っています」とPRしますが、実際のところどうなのか目には見えません。
さらに、たとえばプラセンタなど生物から摂取した原料などは、加工の方法によって、有効成分の配合量が何十倍も変わってしまいますが、それもメーカーが自発的に情報開示しない限りわかりません。
つきつめて考えると、このあたりがとても大切に思われるのですが、今の法律ではそこまでは関与しないようです。

どうでしょう? 化粧品の世界にヒミツやごまかしが少なくなり、世界共通で楽しめる!というメリットができた分、楽しむためには自分の知識を磨かなければいけない・・・。そして、勉強したところで、いろんな限界を感じる・・・。

なんだかちょっと暗くなっちゃいました。
わたしたち、これからどうしたらいいのでしょう?

大丈夫。総力をあげてあちこちの先生にいい化粧品を選ぶポイントを教えてもらいました。次回は「自分に合う、本当に安全な化粧品を選ぶポイント」をお伝えするのでお楽しみに!

Topics
今回の特集は、なんだかお勉強のようになってしまいましたね。このまま次回までお待たせするのは申し訳ないので、ライターの個人的おすすめをちょっと紹介。

左上のチューブは資生堂ナチュラルズのマッサージクリーム。
全成分植物由来で、表示指定成分は一切入っていません。
今回の取材では、ほとんどの先生が口を揃えて
「植物うまれだからって、肌にやさしいなんて大間違い!うるしかぶれ、柑橘類によるシミ・・・むしろトラブルは多い」とおっしゃいますし、発売元の資生堂広報ご担当の小原さんでさえ「植物だから鉱物油より安全、というのは誤解です。確かにナチュラルズは肌に優しいラインですが、“植物由来“というのは、ブランドのポリシーであって、“鉱物を入れると危険だから”という意味ではないのです。むしろ、原料の精製度やクオリティを高めることが、安全性のために必要なことです」とのこと。
「ナチュラルズは植物性ゆえに安全」という私の思い込みはあっけなく崩れ去ったわけですが、でも使ってみると文句無しにいいのですよ。肌に優しく、植物本来のえもいわれぬ芳香がほわ〜んと顔中に広がってしっとり。「やっぱ植物っていい」と思ってしまうのです。肌が弱くていつも乾燥しがちな人に、おすすめします。
真ん中の本は、高輪クリニック院長 岡崎敬得先生著『さわってほしい肌になる』(H&I)。化粧品や肌の基礎知識からおすすめの美容法まで、誰にでもわかるように丁寧に説明されています。巻末についている「表示成分安全度チェック」も、非常に使えます。
そして、つっこんで調べたい方におすすめなのが右のピンク2冊。
『化粧品成分用語辞典』(中央書院)は、その名の通り成分字引なのですが、非常にすぐれた編集で検索しやすいし、読み物として十分楽しく読めます(私は通勤時間を利用して2回読破してしまいました!)。
大きいほうは、中山皮膚科クリニック院長 中山秀夫先生が監修された「化粧品の安全性に関する調査」。東京都の生活文化局から出ています。化粧品のことがよく理解できる、非常に整理されたレベルの高いレポートです。


もりたじゅんこ) 
取材協力  〜来週は先生からの実践的なアドバイスをいただきます。
岡崎敬得先生

シャトー高輪クリニック、医療法人社団有夢会高輪クリニック院長。西洋医学、東洋医学、民間医療などに精通し、体全体のバランスを考えたジェネラルな「補完医療」体系を構築。
中山秀夫先生

中山皮膚科クリニック院長。皮膚のアレルギー、抗原除去に精通。これまでに多数の新アレルゲンを発見、また黒皮症、アトピー性皮膚炎などの抗原除去のためのシステムを開発。

参考文献
『暮らしの中の皮膚障害』中山秀夫監修 第一法規出版
『化粧品成分用語辞典2001』鈴木一成監修 中央書院
『化粧品の安全性等に関する調査』東京都生活文化局消費生活部
『さわってほしい肌になる』岡崎敬得 エイチアンドアイ発行



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