2001.6.1号




えっ、夏に冷え性?と思われるかもしれませんが、最近では冷房などの影響で夏でも冷えを訴える人が増え、さらに男性でも冷え性の人が。なぜ現代人はこんなにも冷えが起こるの?なぜ冷えはよくないの?など、その原因や冷えが身体に及ぼす影響、改善法などをご紹介します。


日本人はもともと冷えやすく、とくに女性は冷えやすい

 あるアンケートでなんと女性の8割が冷えを感じているという結果が。驚きですね。中には夏でも手足や腰が冷え冷えする、一年中、靴下が放せない、そんな人も少なくないようです。そもそも冷えは血液やリンパ液の流れが悪くなることによって起こり、とくに末端部へいくほどその流れが停滞しやすくなるため、手足が冷えるのです。また、一見冷えとは関係なさそうなのぼせやほてりも、実は熱が上に上がって下半身が冷えている状態。いわゆる冷えのぼせで、これも冷え性の一種。西洋医学的には冷え性という病名はなく、なぜ血液の流れが悪くなるのか確かな理由ははっきりしていませんが、一般的には自律神経のバランスやホルモンの変動が大きく影響するといわれています。

 一方、東洋医学では古代中国の自然哲学に由来している陰陽学説という考え方があります。これは相対的な2つの要素を陰と陽に分けて捉え、それらがさまざまに作用しあって自然の営みが成り立っているという考え方です。
「陰は動きがない、冷たいという状態を表し、陽は活動的で、熱を帯びているという状態を表します。たとえば男性が陽なのに対して女性は陰、天地では天が陽で地は陰、また昼夜では昼が陽で夜は陰など。この陰陽でみると日本人はもともと陰の体質なんです。ですから日本の女性は陰の中の陰ということに。女性の中でもさらに陰陽に分けられますが、女性は身体のバランスがくずれたときに陰に傾きやすいんです」(鍼灸師 松崎健太郎さん)。



冷房、食事、ストレス…、冷えを招く要因がいっぱい
冷えは健康と美容の大敵です

 日本の女性はもともと陰の体質、つまり冷えやすい体質のところへ、高温多湿な夏は余分な水分が身体にたまり、よけいに冷えることに。そこへさらにガンガンの冷房、冷たい飲み物、タンクトップに素足…、これでは冷えて当たり前ですよね。また、無理なダイエット、ストレス、運動不足も冷えを助長します。最近では男性にも冷えを訴える人が増えているとのこと。
「男性で冷えがある人は緊張症の人が多いですね。緊張すると身体が硬くなり、血流が悪くなりますから。またイライラしたり怒ったりすると頭に血がのぼって熱が上に上がりっぱなしになり、冷えのぼせに。常にイライラしている人は、いつも冷えのぼせということもありますよ」(鍼灸師 松崎楊子さん)。

なるほど。男性にも冷え性が増えているというのは、今のストレス社会が引き起こしているともいえるんですね。

冷えはそのツラい症状だけでなく、さまざまな身体の不調につながります。血流が悪くなるため栄養や熱が全身に行き渡らず、体温が低下し、各機能の働きも低下、そして免疫力も弱り…、また老廃物もたまったまま。その結果、肌あれ、肩こり、腰痛、むくみ、めまい、胃腸不良、頭痛などなど数え切れないほど。とくにお腹や腰が冷えると子宮や卵巣にダメージを与え、婦人科系のトラブルにも。まさに冷えは万病の元なのです。子宮筋腫やガンなどの病気が原因で冷えが起こる場合もあるので、心配でしたら医者にかかることも必要です。



服装も食事も身体を冷やさない工夫を

 冷え性を改善するには、食事や運動など生活習慣・環境を見直すことが大切です。要因の一つである冷房は自宅なら自分で温度調節ができますが、外ではそうもいきません。そこでなるべく冷えを防ぐ、そして芯から温める工夫を。たとえばファッション。ガードルや窮屈な下着はよけいに血行を悪くするので避けた方が無難。
「冷房がキツいオフィスや電車の中では下半身を守るとともに、首、手首、足首を守ることがポイント。そこは動脈が身体の表面のいちばん近いところにあります。動脈は全身に血液を、つまり熱を送りこんでいるわけですから、そこをガードすれば熱が逃げるのを防げます。スカーフを1枚持ち歩いて首に巻いたり、腰にかけたり。足首にはサポーターやレッグウォーマーをすると効果的ですよ」(松崎健太郎さん)。
 また夏は暑いからといって、キャミソールなど下着を着ない人も多いですよね。でもそれは逆効果。吸湿・発散性のよい素材の下着を着ている方が衣服内の湿度を低く保つことができ、何も着ていないよりも涼しく感じられるのです。ただ、私のように冷え性で汗っかきの人は、グッショリ汗をかいてそのまま冷房の中にいると、より身体が冷えてしまうので素材の工夫を。シルクや薄手の速乾素材なら発散性もよく、いつまでも湿っていて気持ち悪いという不快感もありません。また汗をかいたら、首すじなどの汗をこまめに拭き取ることも大切です。
食事も身体を温めるものを摂るようにしましょう。人間の身体は風土によって体質が違い、基本的には自分たちが暮らしている風土に合った食事を摂ることが大切。ですから私たちには味噌汁にごはん、焼き魚に煮物といった本来の日本人の食事がいちばん。白砂糖、化学調味料、清涼飲料水、スナック菓子、またナスやトマトなどの夏野菜、パイナップル、パパイアのように明らかに南国でとれた果物は身体を冷やすので摂りすぎに注意しましょう。野菜では葉もの類よりもゴボウやレンコン、ニンジン、大根などの根菜類を。また、冷やす食材でも熱を通すと温める性質に変わるので、サラダを食べるなら生野菜よりも温野菜を。温かい飲み物でも煎茶や抹茶、コーヒーは身体を冷やします。お茶ならほうじ茶か番茶が、コーヒを飲むなら紅茶の方がいいでしょう。
ここで身体がポカポカ温まる、鍼灸師 松崎楊子さんおすすめのジンジャーミルクティーをご紹介しましょう。作り方はミルクティーにすりおろしたショウガを適量入れ、お好みでハチミツを加えれば出来上がり。さっそく試してみたところ、チャイのような味わいで香りもよく、気持ちまで温まるようです。これはぜひ試してみてください。



足浴とお灸で身体を芯から温めて

 身体を芯から温めるといえばお風呂。でも夏場はシャワーだけという人、多いですよね。実はシャワーは逆に身体を冷やします。表面は温まったようでも身体の中は冷えたまま。汗を流したり、気分転換のためにはよいけれど、夏でも冷える人は、お風呂に入るという目的でシャワーを浴びるのはやめた方が無難です。
 どうしても湯船につかるのは苦手という人は、ぜひ足浴を。足浴で体質が変わったという人がたくさんいるそうですから、試してみる価値大です。バスタブを利用して42度くらいの熱めのお湯に、くるぶしがつかる程度までつけて15分ほど。冷え性によいエッセンシャルオイルのビターオレンジを1、2滴入れれば、より効果的です。(ビターオレンジに関しては、当サイトの“エッセンシャルオイル図鑑”で取り上げていますので、ぜひ参考にしてください)。好きな香りのエッセンシャルオイルなら香りも楽しめ、気持ちもリラックスできます。冷えが気になるなら毎日行うのがベスト。ただし、夏場はのぼせやすいので、換気に気をつけてください。もうひとつのケアとしてお灸もおすすめ。薬局で手に入る千年灸でOKです。婦人科系・消化器系・精神科系疾患に有効な三陰交と足三里にお灸を行ってみましょう。

三陰交 内くるぶしから上に指3本分上がったところ。
生理の1週間前から行うと生理痛に効果的。
 
足三里 膝の皿の下側、真ん中より外側にあるくぼみから指三本分下の骨と骨の間。

押して痛かったり、ズンと感じるところ、周囲となんとなく違うところがツボ。お灸は片方の足だけでも両方でもOK。熱くなったら我慢せず、すぐにとります。




冷え体質の改善に運動は欠かせません

 「本当によくなるためには、運動も必要!運動しないとますます身体が陰に傾いてしまいます」(松崎健太郎さん)。
運動があまり好きではない、面倒という私には耳が痛い一言。
「3階まで息切れせず上がれますか?キツいようなら明らかに運動不足。水泳でもエアロビクスでもいいですが、気軽にできるウォーキングがいちばん!時間がない人は一駅分歩くとか工夫してみては」(松崎健太郎さん)。
歩かなきゃと構えすぎるとかえってツラくなりますから、周りの風景を楽しんだり、好きな歌を口ずさんだり…、いい気分転換になりストレス解消にも役立つこと間違いなしです。どうしても腰が重い人は自分の好きな、思わず履きたくなるようなシューズを見つけたら、歩こうという気持ちにもなれるのでは。駅までウォーキングシューズで颯爽と歩き、オフィスへはパンプスに履き替えて颯爽と出社。

 さて、冷え性の改善法をいろいろ取り上げてきましたが、全部やろうとすると大変!それにやっぱりオシャレもしたいし、甘いものもやめられませんよね。あれもダメこれもダメでは、かえってストレスになりますから、まずは今までの話を頭にインプット。そしてたとえばコーヒー好きは2回に1回は紅茶にするとか、外出するときはバックの中にスカーフを1枚プラスするとか、また多少無茶をした日は足浴で温めるとか…、自分に合ったものを自分のペースで取り入れ、身体をケアしてあげることが大切です。それでもどうしてもツラいなら、漢方や鍼灸など専門家の手を借りることも必要。冷え性は我慢していても改善されませんから、できることから実践して冷え体質を克服しましょう。


(いのぐちあきこ) 

writer's eyes
多分、“極陰”体質の私。やっぱり運動やらないとダメなのね、と改めて悟り、さっそくReebokのウォーキングシューズを購入しました。これでホントに身体が変わったら驚き!さてどうなるか、今後の様子もお知らせしますね。


■取材協力/ 松崎健太郎さんプロフィール
鍼灸師。整体整形外科専門の病院勤務後、東京目黒区にBe Free治療院を開業。筋肉、骨格のゆがみからくる痛み、内臓疾患に着目し、ねじれをとる整体、鍼灸治療が専門。幼児の成長不良、アトピー、喘息などの症状にも成果をあげている。
  松崎楊子さんプロフィール
鍼灸師。リラクゼーション、痩身、オイルマッサージを中心に、東洋医学的な見地からのアプローチを行っている。「Hanako」「セリーヌ」「峰竜太ホンの昼メシ前」「トゥナイト」など雑誌、TV出演多数。




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