2001.9.21号




ヨーグルトを常食するブルガリアの人々が長寿なのはよく知られるところ。
長寿とはつまり、老化を遅らせらることができるということ。
言いかえれば、いつまでも若々しさを保てるということです。
そんなすべての女性の願いをかなえることができるヨーグルトの秘密をさぐります。


ヨーグルトのルーツをたどる

ヨーグルトと人間の関わりは大変に古く、発祥の地と言われるバルカン半島(現在のブルガリアのある地域)では、5,000年も前にブルガリアの先住民であるトラキア人が、羊の乳を素焼きの壺に入れて発酵乳をつくっていたという記録が残っています。
ほかにもエジプト、中央アジア、メソポタミアなど、古代文明が幕を開けた地では、馬や羊などの乳をなんらかの形で発酵させ、貴重な栄養源としていました。
人類の歴史において、偉大なるヨーグルトの出現は必然だったのでしょう。
またこれら発酵乳は、美と健康の秘薬としても珍重されてきました。古代ギリシアではこれにより男性にたくましさが、女性には美と知恵が授けられると言い伝えられ、またペルシャでは、化粧品としても使われてきたとか。さらにユダヤ人の医者が秘薬として独占したため、ヨーグルトの西欧への伝来が遅れたという話もあるほどです。先人の知恵に感嘆すると同時に、美と健康にかける古来からの人間の貪欲さにもまた驚かされます。
これに比して日本の市場にプレーンヨーグルトが姿を表したのは30余年前。 2年がかりの交渉の末にブルガリアから菌の使用許可を得、技術提携によって生まれました。しかし、その後の食事情の変化や、健康に対する意識の変革から、今では毎日の食生活の中で欠かせないものとなっています。



栄養の宝庫、ヨーグルト

ヨーグルトとは牛乳に乳酸菌を加えて発酵させたもの。基本的な製造方法は、数千年前に乳の中に偶然に乳酸菌が混じりこんでヨーグルトができたときと変わりないくらいにシンプルです。
そもそも牛乳はたんぱく質源としては完璧に近く、カルシウムの供給源としても最優秀ですから、牛乳同様に栄養価が高いことはいうまでもありません。しかも、乳酸菌の働きによって、たんぱく質の構造が変化し、必須アミノ酸の割合が増え、消化酵素による作用を受けやすくなっています。また、栄養過多な現代においてなお不足しがちなカルシウムが、体内に吸収されやすい形に変成しているのも大きなメリット。微量ミネラルとしてはリン、また女性に不足しがちな鉄分の摂取も期待できます。ビタミンにおいては美肌に欠かせないビタミンA、疲労回復や糖質の燃焼にも効果のあるビタミンB2も豊富。あの真っ白な姿の中には驚くほどの栄養が詰まっているのです。
さらに乳酸の爽やかな酸味で食欲を増進し、胃液の分泌やぜんどう運動が促され、消化吸収を助けるという利点もあります。 また乳酸発酵により乳糖が分解されているので、牛乳でお腹がごろごろしてしまう乳糖不耐症の人にも安心です。




若さを保つ秘訣は腸にあり

[乳酸菌の正体は]
しかしヨーグルトが素晴らしいのは、このように栄養的に優れているからだけではありません。
腸を健康な状態に保ち、新陳代謝を高めてくれるのが、他の食品から際立つ最大のメリット。そしてその鍵を握っているのが「乳酸菌」なのです。
乳酸菌とは、乳糖やブドウ糖を分解して大量の乳酸を作る細菌の総称です。乳酸菌の種類は多く、自然界のあらゆるところに分布していますが、その性質から、酸素の有無に関わらず生息できる菌のグループと、無酸素状態でしか生育できないグループに大別されます。後者の代表であるビフィズス菌は酸素の少ない人間の腸内に多く生息すると同時に、食物中に含まれる場合は口から体内に入り、生きたまま腸に到達し、活動します。一方、前者の中には乳製品のスターターとして使用される菌もありますが、これらは生きたまま腸に届くことはありません。

[腸内の善玉菌vs悪玉菌の戦い]
ところで、人間の腸にはもともと約100 種、約100 兆個もの細菌が住んでいます。これらの中には人体によい影響を及ぼす善玉菌と、有害な症状を引き起こす悪玉菌があります。そしてそれらは常に、腸内で定着するためのスペースを奪い合っています。善玉菌の代表がビフィズス菌や乳酸棹菌。有害菌の代表がウエルシュ菌、ブドウ球菌、大腸菌などです。健康な腸は善玉菌の勢力が強く、多くのスペースを占めていますが、年齢とともにビフィズス菌が減って、逆にウェルシュ菌などの有害菌が増えてきます。また加齢ばかりでなく肉食に偏った食生活や、抗生物質の飲み過ぎ、過度のストレスによっても悪玉菌は増加します。これらが優勢になると腸内の腐敗が進み、新陳代謝が衰え、老化も早まるばかりでなく、悪玉菌が産出する有害物質によって動脈硬化やガンなどの成人病にかかりやすくなります。

[生きたまま腸に届いて活躍するビフィズス菌]
ヨーグルトに含まれるビフィズス菌は、生きたまま人間の腸内に到達して腸内菌に働きかけることができる貴重な存在です。以下がその具体的な活動です。

有機酸を作る
腸内で増殖し、多量の有機酸(乳酸、酢酸)を作り出します。それらが腸管を刺激し、便秘や下痢を改善し、消化吸収を向上させます。
悪玉菌を排除
それらの有機酸は悪玉菌を排除するとともに増殖を防ぎ、腸内の腐敗を防止します。
有害物質の吸着、排出
食物繊維のように他の有害物質を吸着、排出させる働きもあり、腸内を浄化します。
善玉菌を優勢に
自らが作り出す糖を糧にビフィズス菌を増やして腸内を健康な状態に保ち、新陳代謝を高めます。
免疫機能の活性化
腸壁が本来持っている免疫機能を活性化させ、免疫物質の分泌を促して抵抗力を強化します。ウィルスを攻撃したり、ガンや感染症に対抗する力も強めます。

 と、ビフィズス菌の腸内での活躍はまさに正義の味方。しかし、これらの効果は1回ヨーグルトを食べたから得られるというものではなく、食べ続けることによって次第に確実になるのです。つまり、ヨーグルトを常食すれば慢性の便秘や下痢が改善され、腸の状態を若々しく保つことができ、それが体全体の新陳代謝を高め、ひいては細胞の老化防止や肌の若返りが促進されます。古来、不老長寿の妙薬として珍重されてきたヨーグルトの秘密はここにあったのです。




よりおいしくてよりからだによいヨーグルトの選び方

 元来ヨーグルトとは、生の乳を乳酸菌の力だけで発酵させたナチュラルなもの。ところが、現在スーパーの棚に並んでいる商品の中には、生乳100 %のものが意外にも少ないのです。また、各種のフレーバーがついたものが棚の大半を占めているのも残念なことです。せっかく体によいという意識で食べるのですから、味はもちろん、原料や製法にまでこだわった商品を選びましょう。
 そこで、商品を選ぶ際に必ず目を通してほしいのが、パッケージの裏や横にある成分表示です。
原材料の欄になんと記してあるか、「生乳」とあれば問題ないのですが、ここに「乳製品」とある場合は、脱脂粉乳など、なんらかの形で加熱加工した乳を使っていることを示しますから要注意。
風味が損なわれるのはもちろん、たんぱく質も熱で変成していますから、栄養的にも偏りが出てきます。ただ「脱脂乳」という表示もあり、混乱を招きやすいのですが、これは加工乳ではなく、生乳をクリームセパレーターにかけてクリーム分(乳脂肪分)だけを除いたもの、あくまでも生の乳です。脂肪分が気になる人はむしろこちらをどうぞ。要するに原材料が「生乳」または「脱脂乳」とあるものを選べば間違いありません。
 そして言うまでもなく、糖分を含まないプレーンタイプがおすすめ。甘味がほしいときには、はちみつやメープルシロップを加えたり、ジャムをプラスするとよいでしょう。味わいが自然なのはもちろん、フレーバーとして甘味がついているものよりも、使用糖分も少なくてすみますから。



毎日の食習慣にする上手な食べ方

 朝食にフルーツやシリアルといっしょに、というのが最も一般的な食べ方でしょうか。爽やかな酸味で起き抜けの頭も胃もすっきり……。ところが、ここに一つ落とし穴があります。ビフィズス菌は酸に弱いという性質があり、胃酸や胆汁などの強い酸をくぐり抜けて生きたまま腸に到達できる確率は高くはありません。その性向を考えると、食後のほうが胃酸が薄くなっているので、腸に届きやすくなります。つまりヨーグルトは朝食後に食べるのがいちばん効率がよいようです。毎日摂取し続ける大切さはもちろん、コツを抑えて確実に効果を高めたいものです。
 また、ヨーグルトをそのまま食べるのが得意ではないという方には、料理に使うことをおすすめします。年間の消費量が1人30sとずば抜けて多いブルガリアでは、そのまま食べるのももちろん、料理に使う比重がとても高いのです。ちょうど日本人が醤油を、イタリア人がオリーブオイルをかけるように、何にでもヨーグルトを加えます。例えばドレッシングやタルタルソースのマヨネーズの代わりに使えばとても爽やかです。 パンケーキやマフィンを焼くときに加えれば、よりふっくらと仕上がります。また、肉をマリネすれば乳酸菌の働きで肉が柔らかくなり、シチューやカレー、スープの仕上げに加えれば、バターのようにカロリーを増やすことなくコクや深みを増すこともでき、便利です。
 このように幅広く使いこなすためにも、まずはプレーンヨーグルトを常備すること。 気づいたときにひとさじの習慣をつければ、ブルガリア人には及ばなくとも、少しずつ摂取量を増やしていくことができるでしょう。




NYでYO−GOAT・ヨーゴート発見

「牛乳+乳酸菌=ヨーグルト」はすでに固定観念ですが、牛の乳でなければという決まりはないはず……、と思っていた矢先、NYで山羊の乳のヨーグルトを見つけました。その名も山羊をもじって、YO−GOAT。飲むヨーグルトタイプのヨーグルトです。山羊乳の栄養成分が牛乳にも増して濃いのはよく知られるところで、フランスを初め欧州各国では昔から盛んに山羊のチーズが作られてきました。
YO−GOATの生みの親であるCoach Farmは、マンハッタンから車で2時間、森と湖に囲まれた地で、昔ながらのチーズ作りを目指して800 頭以上のアルパイン種の山羊を飼育する牧場です。
絞りたてのフレッシュなゴートミルクからチーズを作る過程で生まれる発酵乳のおいしさに目をつけ、苦心の末に商品化したのがこれ。低温殺菌した山羊乳に独自の乳酸菌を加えてじっくり発酵させただけの、保存料や添加物、塩、砂糖も一切加えない、100%天然のヨーグルトです。山羊の乳なのに驚くほどくせがなく、マイルドでクリーミー。太古のヨーグルト作りを垣間見るようなこの製品はまた、発酵乳の世界の深さ、広さを教えてくれました。




21世紀はプロバイオティクスの時代

 「プロバイオティクス」とは、初めて耳にする言葉かもしれませんが、「口から摂取され、人間の腸内微生物のバランスを正しく改善し、 人体に有効に働く生きた微生物」のこと。薬のような即効性はありませんが、食習慣にすることで確実に体に変化をおこす物質です。ヨーグルト内のビフィズス菌はちょうどこれにあたり、 ブルガリアの人々の長寿はまさにこのバイオプロティクスに支えられていると言えます。21世紀を迎え、生理学、栄養学など、各界から注目を集める存在です。

 ヨーグルトを製造する乳業各社も、昨今プロバイオティクスの働きのより強い乳酸菌の開発に熱心です。例えば「ネスレ」では、4000種もの菌の中から生きて腸に到達し、腸壁へ吸着する力が強い乳酸菌を選び、独自の乳酸菌LC1を開発しました。これを加えたヨーグルト「ネスレ・エブリデイ」も好評です。
 またこの言葉は、転じて「薬に頼らずに自分の免疫力を高めて健康を維持してゆく生き方」そのものをも指すようになりました。文字で書くと難しく感じますが、大昔から人々がごく自然に実践してきたこと。にもかかわらず現代人は、薬や医学の発達でついそれをおろそかにしがちでした。
そして成人病などのつけが回ってきた今、改めてその重要性を認識しているというわけです。
 ヨーグルトも多様化している時代、商品を見極める目を持ち、自分に合ったヨーグルトを選び、毎日の食習慣として定着させ、プロバイオティクスの力を最大限に高めることが大切です。それこそが、これからの健康と美へのパスポートなのです。




小松宏子) 

writer's eyes
 牛乳大国というイメージのあるアメリカに住み始めて、すぐにアメリカの乳製品がナチュラルでないことに気づき、大変に驚きました。乳脂肪分のカットはもちろん、ミネラルやビタミンの添加に一生懸命で、無添加の牛乳を探すのが難しいほど。おまけにヨーグルトもフレーバーが強いものが多く、すっかり食傷していたころ、アメリカ中の良質な食品が集まるフードショーで先のヨーゴートに出会いました。パッケージの愛らしさに惹かれて試食したのですが、我ながら嗅覚のよさに、にっこり。アメリカにも意識の高い酪農家がいることに嬉しくなると同時に、アメリカ人ならではのユニークな視点でのモノづくりに感心させられました。日本の大手メーカーの乳製品は、コンビニで売れるマス志向の商品に終始しがち。ヨーグルトも原乳の改善や殺菌法などよりも新フレーバーの開発のほうが目立ちます。ヨーゴートのように作り手の個性が前面に出た商品が多出するようになると、乳製品市場がもっと魅力的になるのにと思います。



Copyright (C) 2001 Island Magic Inc. / kireine.net All Rights Reserved.