2002.3.27号




植物油は必須脂肪酸やビタミンEなどの大切な供給源。
オリーブオイル・ブーム以来、単一の素材で作られるピュアな植物油が、サラダ油に代わって注目を集めています。
ひと口に油といっても含まれる微量成分はそれぞれ。
上手に使い分けて一味上のおいしさを目指すとともに、身体への効果をより確かなものにしましょう。



植物油って?ピュアオイルって何だろう?

 油(脂肪)は、糖質、たんぱく質とともに、人が生命を維持していく上で欠くことができない栄養素です。科学的には、植物油も動物脂も、1個のグリセリンに3個の脂肪酸が結合してできた物質。以前は油というだけで目の敵にされていましたが、油にもたくさんの種類があり、なかでも植物油が健康の維持には欠かせないものであることはもはや常識になっています。
 また、ひと昔前までは、植物油といえば、サラダ油とてんぷら油の区別しかなく、数種の油をブレンドしたものが主でしたが、イタリア料理とオリーブオイルのブーム以来、単一の原料で作られたピュアオイルが注目を集めています。しかし、その使い分けとなるとまだまだ。そこで今回は、植物油の成り立ちや栄養成分を認識するとともに、原料の違いによる個々の特徴を知り、使い分けを学びましょう。
 植物原料100 %のピュアオイルとは、 油のもととなる植物の胚芽や種子を一種類に限定して作られたオイルです。 なたね、ごまなど油分をたくさん含む原料は、圧力をかけて油を搾り出す「圧搾」という方法。また、油分の少ない原料は「油出」という方法で抽出され、脱臭、脱色、脱酸などの工程を経て精製され、植物油になります。



脂肪酸が決める、体内での働き

 植物油が植物油として機能するのは、脂肪酸を含んでいるからですが、まずはその説明を。
 脂肪酸は分子の結合状況により、大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とに分かれます。飽和脂肪酸は、牛や豚などの動物性の脂に多く含まれ、摂りすぎると、肥満や悪玉コレステロールの増加を招きます。
 一方、不飽和脂肪酸は、主に植物油、または、いわし、まぐろ、たらこなどの魚類や魚卵の脂などに含まれます。これは細胞膜・組織の形成、ホルモンの合成や調整を行うばかりでなく、神経刺激や記憶に作用するなど、私たちの成長と正常な生理機能を維持するのにとても重要な役割を担っています。
 さらに不飽和脂肪酸は多価と一価に分かれ、多価脂肪酸の中に、リノール酸系とリノレン酸系のグループ、一価脂肪酸の中にオレイン酸系のグループがあります。主な働きを列記してみましょう。

<リノール酸>
身体の組織が正常に機能する上で欠かせない必須脂肪酸。血中のコレステロール値を下げる働きがあるが、摂りすぎると悪玉コレステロールだけでなく、善玉コレステロールまで減らしてしまう。アレルギーの原因になることも。

<リノレン酸>
同じく必須脂肪酸で、血液の流れをよくしたり、ガン細胞の増殖を抑えたり、アレルギー症状を改善する働きがあるといわれる。脳細胞の活動を支えるDHA(ドコサヘキサエン酸)もこの系列の脂肪酸。

<オレイン酸>
体内でも生成できる脂肪酸。善玉コレステロールは減らさずに、悪玉コレステロールだけを減らす効果で注目を集めている。酸化しにくいのも利点。

 これら不飽和脂肪酸の割合は、オリーブオイルは70%以上をオレイン酸が占めるとか、逆にべに花油は70%以上をリノール酸が占めるといった具合に、原料によって異なり、風味の違いはもちろん、身体に及ぼす影響も異なってきます。



油とビタミンのE関係

 また、植物油の栄養価で忘れてならないのが、 ビタミンEを豊富に含むという点です。なにしろ日本人はビタミンEの摂取量の3分の1を植物油に依存しているほど、 植物油はビタミンEの供給源としては大切。おおまかな平均で100g中20mg前後含まれています。 また脂質は、ビタミンAやDといった脂溶性ビタミンの吸収を助けるという大切な働きも備えています。
 ビタミンEは、末梢血管を拡張し、血液の循環をよくするとともに、抗酸化物質として、老化の元凶である体内での過酸化脂質の生成を抑制して老化を遅らせてくれます。若い女性にとっても、手足の冷えの改善や、みずみずしい皮膚や髪の維持など、美容と健康のためには欠かせないビタミンです。植物油それぞれの原料によるビタミンEの含有量の違いを認識して、効率的に摂りたいものです。



こんなに違う、オイルの栄養価と風味

 では、次に、各植物油の簡単な特徴を見てみましょう。まずは、日本の油の歴史の中でもおなじみの植物油からです。

なたね油(キャノーラ油
酸化安定性、熱安定性ともに高く、生でサラダに、炒めものや揚げ物などの加熱調理にもと、万能の油。風味はあっさりと淡白なのが特徴。現在多く流通しているキャノーラ油は、カナダ産の品種改良した菜種が主原料で、オレイン酸の含有率が非常に高く、リノレン酸の含有量も高めだ。

べに花油
べに花の種子が原料で、さらりとまろやかな風味が特徴。植物油中、最もリノール酸を多く含む油だったが、品種改良により、オレイン酸の含有量の多い、ハイオレック種も登場。高オレインべに花油も普及。

綿実油
くせがなくさっぱりとした風味がドレッシングの材料として好まれる。ビタミンEが100g中約30mgとふんだんで、リノール酸も豊富。

コーン油
とうもろこしの胚芽から作られる油で、ほのかな甘みとまろやかな風味。熱安定性にすぐれているので、揚げ物や炒めものに適している。酸化しにくく、日持ちがよいのも利点。リノール酸が豊富。

ひまわり油
ひまわりの種子から作られる油。味は淡白で上品。ビタミンEの含有量が、100 g中39mgと植物油の中では最も多い点に注目。

ごま油
ごまの煎り方によって、香りのないものから、強い芳香のものまで多種。セサミノールなど抗酸化物質が豊富に含まれているため、体内での活性酸素の生成を抑制。賞味期限が2年間もあるように、非常に酸化しにくく、熱にも強い。また、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛などのミネラル類、ビタミンA、B1 、B2 、Eなどビタミンも豊富。

次に、比較的新顔の油です。

オリーブオイル
イタリア料理のブームを通して、今や世帯普及率が50%を超えるほどに定着した油。オリーブの実をペースト状にすりつぶしてから、圧搾しただけのものをヴァージンオリーブオイルと表示。そのうち、鮮度と風味の基準である酸度が1%以下の低いものをエキストラヴァージンオリーブオイルと格付け。この等級だと成分的には、オレイン酸が70%以上を占め、ビタミンAやポリフェノールなども含有。精製処理を施したオリーブオイルと、ヴァージンオリーブオイルを混ぜたピュアオリーブオイルは加熱調理に。

グレープシードオイル
その名の通り、ぶどうの種子に含まれる油を圧搾抽出したもの。フレッシュなグリーンの色合いと、 ほのかにフルーティな香り、さっぱりとした味が特徴。熱安定性も高く、オイル本来のコクが最後まで保たれ、卵料理との相性が特によい。100g中30mgとビタミンEの含有量も高く、ポリフェノールも少量だが、継続摂取で期待できる数値。アトピー性皮膚炎に効くとの報告も。

パンプキンシードオイル
原産国のオーストリアでは、伝統的に親しまれてきた高級な油。特殊なかぼちゃの種を低温で煎り、圧搾した油。エキストラバージンオイル同様、精製せずに使用するので、独特の香りと味が生きていて、ドレッシングや料理の仕上げなど生食用に。 ビタミン、ミネラル類、ポリフェノールも豊富。

しそ油
しそ科植物の種子を圧搾、精製した油で、60%以上もαリノレン酸を含む貴重な油。ただし、発火点が低く加熱に弱いことと、高価な点から、野菜サラダやマリネのドレッシングなど、 常温での使用に向く。



キッチンに何を常備? そしてどう使い分ける?

 これまで、植物油全般の栄養的特性と、個々の特徴を見てきましたが、具体的にはキッチンに何を常備し、どう使い分けていけばよいのでしょうか。 植物油を構成する脂肪酸には先述の通り、 リノール酸、 リノレン酸、 オレイン酸がありますが、 それらの摂取は、どれに偏ってもよくありません。その意味からも意識して数種の油を使い分けるのは望ましいことです。 が、 外食やスナック類など、 無意識にリノール酸を摂取する機会も多いので、 ここではオレイン酸とリノレン酸をどう摂るか、 これを主眼に考えるのが得策です。
 私たち日本人は、とんかつを揚げ、野菜炒めを食べ、パスタを楽しむ、 まさに雑食人種。 そんなわがままな味覚と栄養的効能を満たすには、 油を、 風味づけのための調味油と、 加熱調理用の油とに分けて考えることがポイント。
 まず調味用には、和食と中華に欠かせないごま油はもちろん、イタリア風の料理や和食やサラダにも重宝するオリーブオイル、 この2種は必携。これら2種で、オレイン酸とビタミン、 ミネラルなどの微量成分はかなりカバーできるはずです。
 次に、 加熱調理では、 摂りにくいリノレン酸を補う場として、 この含有率が比較的高めのなたね油(キャノーラ油)を選ぶのが賢明。 もちろん植物油だけに頼るのではなく、 いわしやまぐろなどの魚類を積極的に食べることも忘れてはなりませんが。 また、ビタミンEの強化を特に考えるなら、ひまわり油かグレープシードオイルを使うのがよいでしょう。
 と、こうして考えると、調味オイルにオリーブオイルとごま油(もちろん炒めものにも)、加熱調理になたね油(キャノーラ油)を揃えるのがおすすめの組み合わせでしょうか。 余裕があるならもう1本グレープシードオイルを備えて、風味を強調せずにさっぱりと生で使いたいときに用い、 ビタミンEの強化を図ると完璧。植物油に含まれるリノール酸、リノレン酸、オレイン酸、ビタミンEの各栄養素がほぼまんべんなく摂れるというわけです。アレルギー対策などで、リノレン酸を強化的にとりたいのであれば、調味油としてのしそ油を常備するのも手です。
 とはいっても、油はいずれも、開封後は酸化が進みますから、欲張って使い切れないほどのオイルを揃えるのは愚か。開封後2カ月くらいで使い切れる量を、効率よく使い回していくことが大切です。メーカーは1カ月といっていますが、1カ月で完全に使いきるのは大変。ですから、酸化安定性の高いごま油やキャノーラは比較的大瓶でもOK。エキストラヴァージンオリーブオイルやしそ油など、鮮度を重視するものはなるべく小瓶で、という工夫も必要になってきます。一度に欲張らずに、ベースとなるオイルを決めて、残りを毎回新たなものにチャレンジしてみるという使い方もよいでしょう。
 こうして数種のオイルを使い分けることで、効率よく栄養を摂取できるほか、料理への意識が高くなり、知らぬ間に料理上手に…、となれば理想的ですね。


小松宏子) 


writer's eyes
 人種のるつぼ、フードのるつぼと言われるだけあって、ここNYでは実にさまざまなオイルが料理に使われています。日本との違いで目立つのは、ヨーロッパで好んで使われるピーナッツオイル、くるみオイルなどが多様されているということでしょうか。ただ、一般的なスーパーマーケットのオイル売り場では、ピュアオイルとしては、カナダが主産地ということもあって、なたね油(キャノーラ油)が目立ちます。また、イタリア料理の浸透は当然日本よりも古く、深いので(その割には味は? のときも多いのですが)、オリーブオイルの常備率は限りなく100 %に近いのではないかと思います。
 かくいう私も常備オイルはエクストラバージンオイル、ごま油に、なたね油(キャノーラ油)の組み合わせ。それに現在はくるみオイルを加えて、ときどきこくのあるフレンチスタイルのドレックングを楽しんでいます。
 また、日本と食体系が異なる彼らにとっては、油はまだまだ十把一絡げにして目の敵。家庭での油の使用量はおそらく日本よりずっと少ないでしょう。しかし、それよりも糖分の摂取を減らし、植物油を上手に生かして、腹もちのよい料理で上手にダイエットをすることのほうが大切なのでは・・・と人ごとながら、おせっかいをやきたい気持ちになるのです。



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