2002.5.8号



パンケーキに、ホットレモネード、煮込み料理にと食卓を豊かに彩ってくれるはちみつは、有史以前より続く、蜂からの贈り物。
その香り高く濃厚な甘みに凝縮された、すぐれた栄養価とさまざまな効能を見てみましょう。



歴史の中に見る、はちみつの重要性

 はちみつが、古来自然界に存在する貴重な甘みであったことは容易に想像がつきますが、人間との関わりは、予想をはるかに超えた長さ、そして深さです。「はちみつの歴史は人類の歴史」という諺がイギリスにあるそうですが、まさにその通り。人類は誕生とともにはちみつの恩恵に預かってきました。
 貴重な世界遺産として知られる、スペイン北部のアルタミラ洞窟の壁画は、紀元前1万8000年〜紀元前1万5000年前頃に描かれたものですが、狩りの絵に混じってなんとはちみつの採集風景も描かれています。また、古代エジプトでは、長きにわたって王位のシンボルとして使われてきたのが蜜蜂。そして3300年も前のピラミッドから発見されたはちみつがまったく変質していなかったという事実は、はちみつの驚異の殺菌作用を証明してあまりあります。また、漢方の古典である「本草綱目」では、不老長寿の薬であるとも。
 このように、はちみつは、古来、重要な甘みというだけでなく、内服薬や外傷に欠かせない薬として、また、みつ酒、化粧品などの原料として珍重されてきました。



蜜蜂の力作。至福の甘み、はちみつ

 ディズニーのプーさんのお話の中でも、たっぷりはちみつが詰まった蜂の巣をとろうとするシーンは 印象的ですが、実際にはちみつは、蜜蜂たちによってどのようにして作られるのでしょうか。
 驚くべきことに、外で花蜜を集めてくる外勤蜂と、中ではちみつに加工する内勤蜂の、精巧な共同作業によってはちみつはでき上がります。まず、外勤蜂がストローのような細い口をのばして花のみつを吸い、胃の中にためて巣に持ち帰ります。この時点では花蜜はまだ水っぽく、糖度は10〜20%くらい。
 この集め帰った花蜜を口移しで内勤蜂に渡し、これを受け取った内勤蜂が巣の中へ吐き出しながら貯めていきます。その際、酵素の働きで糖分をブドウ糖や果糖に転化させ、水分を蒸発させます。この時点での糖度は約40%。
 これをさらに小さな水滴にして六角の壁にはりつけ、羽であおいで熱風をあてます。この作業を繰り返して行い、別の巣房に集めて熟成。糖度約80%のはちみつができあがります。最後に内勤蜂が腹部からロウを出して満タンになった巣房に蜜ぶたをして保存します。
 実際の養蜂では、いっぱいになった巣枠を遠心分離機にかけて回転させ、遠心力で勢いよく巣穴の蜂蜜を外に出します。これで、私たちの目にするはちみつのできあがり。それをさらに濾過したり加熱したりそれぞれの養蜂場やメーカーのポリシーで仕上げられ、市場に出回ります。



はちみつの風味は花の違いから

 はちみつの味や香りなどの個性は、いずれの花の蜜を集めるかによって決まります。 よく知られる花別の特徴は以下の通りです。

●レンゲ まろやかな甘みで、 ほのかな花の香りがマイルド。
●アカシア さらりと淡白な味で上品な香り。 結晶しにくいはちみつ。
●オレンジ 柑橘系のさわやかな甘みと香りが特徴。
●クローバー 世界的に最も生産量の多いはちみつ。 香りは強いが甘味は爽やかで結晶しやすいタイプ。

 一般には色が濃いものほど、ミネラル分の含有量が高く、例えば、暗褐色で、強い香りを持つソバのはちみつは、鉄分などミネラル類がずば抜けて高く、滋養食品としても知られます。また、ほろ苦い甘みが大人っぽい栗のはちみつ、清々しい香りのハーブ系のはちみつなど、それこそ何百種類ものはちみつが作られています。
 蜜蜂はなぜ、同じ花の蜜ばかりを集めるのかと不思議に思うかもしれませんが、蜜蜂にとっては、同じ種類の花から蜜を集めるほうが効率的だから。というのも、蜂は人間のためにはちみつを作っているわけではなく、自分たちの生活の糧として花蜜を持ち帰るのですから、効率を求めるのは自然の摂理。しかし、地形などによっては他の花の蜜が混ざることもあり、それが、たとえ同じ花の蜜から集めたものでもその土地特有の味、個性となって現れ、結果としてはちみつの魅力、深みを増しているのです。
 また透明度の高いさらさらとしたものから、白濁して結晶したものまで、さまざまなタイプがあることになぜ? と疑問を持つ方も多いことと思います。これははちみつ中のブドウ糖の割合によるものです。つまりは花の種類の違いによるもの。なたねやクローバーなど、ブドウ糖の割合が高いものは、気温が下がらなくとも結晶します。逆にアカシアなど低いものは、黄金色のさらさらとした状態が長く続きます。



はちみつにはこんなに栄養がいっぱい

  はちみつの成分は、種類によっても多少異なりますが、平均的には、ブドウ糖35%、果糖40%、オリゴ糖数%、そのほか微量成分としてはカルシウム、鉄、ナトリウム、カリウムなど12種類ものミネラル類。ビタミンB1、B2、B3、葉酸などビタミンB群、パテントン酸、ビタミンKなど10種類ものビタミン類が含まれています。
 はちみつのすぐれた効能は、上記のような糖分の構成比と、さまざまなビタミン、ミネラル類の働きによるものです。具体的な効果は以下の通りです。

[はちみつでダイエット?]
 はちみつはすべての甘味料(科学的に取り出したブドウ糖を除く)と食品の中で一番早く血液中に吸収されます。摂取した20分後に血液の中に入り込んで、栄養源としてはたらき始めるほど、吸収が早いのです。スポーツ選手のはちみつドリンクの効果も科学で証明ずみというわけです。
 この現象は、はちみつの主成分がブドウ糖と果糖ということに起因します。同じ甘味でも、砂糖の場合、体内で一度分解してから消化、吸収という過程を辿りますが、はちみつに限ってはその必要がなく、直接、胃壁や腸壁から血液中に吸収されます。これは即効性のエネルギー源ということだけでなく、貴重なビタミンやミネラルが失われることなく、効率よく吸収されるという利点にもつながります。
 しかも、他の糖分と異なり、身体で処理できる以上に吸収されることがなく、血液中の糖度を必要以上に高めることがありません。従って糖尿病の方でも、医師と相談の上であれば、摂ることができるとのこと。
 この現象はまた、ダイエットにも役に立ちます。あんなに甘いのにダイエット? と首をかしげるかもしれませんが、その仕組みを知れば、なるほど! なのです。通常、血液中の糖分は、肝臓に送られてグリコーゲンとなって蓄えられますが、肝臓にも限度があり、一定量を過ぎると、余った糖分は脂肪として蓄積される、つまり、太るという現象が起こります。体内で分解されてからブドウ糖となる、炭水化物や砂糖の摂りすぎは、まさにこの現象を招きます。要注意。
 ところが、はちみつの場合は、ある一定量しか糖分が血液中に吸収されないので、同じ量をとっても脂肪に転換される率が非常に少ないのです。というわけで、甘味料として摂るなら、断然はちみつの方がお得なわけです。コーヒー、紅茶にどうしても甘みが欲しいという方は、はちみつに切り換えてはいかがでしょう。また、トーストにジャムよりは、トーストにはちみつです。

[強力な造血作用は、貧血ぎみの人に]
 はちみつはには造血作用に必要な鉄分と葉酸が多く含まれているので、貧血気味の方にもおすすめです。それぞれの働きは以下の通りです。
●鉄分 血液中のヘモグロビンを形成するのに欠かせない成分。
●葉酸  ビタミンBの複合体のひとつ。ほうれん草やレバーにも豊富に含まれ、造血ビタミンと呼ばれるほどの効果の持ち主。
 はちみつは、ほうれん草のように一度に大量に摂取することはできませんが、継続的に摂取することで、造血効果が期待できます。

[飲みすぎたかな?の翌日に]
 あまり耳にしない成分ですが、抗脂肪肝ビタミンと呼ばれるコリンや、老化防止ビタミンと呼ばれるパテントン酸が肝臓を強化するのに役立ちます。飲み過ぎたかな、と思った次の日に、はちみつ入りのホットレモネードはいかが?ビタミンCと相まって効果大です。また、普段から酒量が多い方は、甘いものが苦手なケースが多いのですが、お料理に使うなどして、はちみつを意識的に摂るようにするとよいでしょう。
 また、ビタミンとミネラルの関係は微妙で、ビタミンだけを摂取してもミネラル類が不足していると、体内でビタミンの効果が充分に発揮されません。またビタミンには、単一でとるよりも、多数とったほうがお互いに協力し合って効果的に働くという性質もあります。その点からも多数のミネラル、ビタミンをバランスよく含んでいるはちみつは、すぐれた栄養源であるといえるわけです。

[保湿効果でお肌しっとり]
 古くから化粧品として使われてきたように、はちみつの保湿作用は、生活の知恵としても広く知られています。石鹸で顔を洗うときに数滴はちみつを混ぜると、洗い上がりのお肌がしっとりします。手足のかさつきが気になる方も、ちょっと贅沢ですが、同様の方法を試してみてください。唇のアレにも、ほんの少量を塗るだけでしっとりつややか。また、口内炎でお悩みの方に朗報。口内炎をおおうように塗布して一晩、効果てきめん!です。

このように、身体と心にポジティブな甘みを積極的に利用しない手はありません。「口さびしいときに、スプーン一杯のはちみつ」は、ダイエットに、ストレス解消に、不足しがちなビタミン、ミネラル補給にと、 強い味方となってくれることでしょう。


小松宏子) 


writer's eyes
 はちみつ好きといえども、実際にはちみつが、蜜蜂たちによってどのように作られているのかを知る人は少ないでしょう。何万年も昔から続けられてきた、神秘的ともいえるその共同作業を知ると、はちみつ一匙のありがたさがぐっと増し、滋養も高まるようです。
 日本では、レンゲ、アカシア、みかんなどのはちみつが多く見られますが、ここアメリカでは、世界的にも産出量が多いという、クローバーのはちみつが最も一般的です。ついで、ラベンダー、オレンジなど。また、ワイルドフラワーといって、日本でいう百花蜜のように、さまざまな花からとったものも豊富です。いずれも、トラディショナルなアメリカ人の朝食には欠かせないものです。そういえば、ディズニーのプーさんと、はちみつも切っても切れない仲ですね。
 どれを買おうかと、売り場でしばし悩んだ経験は誰しもあることと思いますが、色が黒いものほどミネラル分が多く、従って味・くせ共に強く個性的。また、白く結晶しているものほど、ブドウ糖含有量が高いということを覚えておけば、選ぶ際の目安になることでしょう。


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