2002.7.24号



沖縄の長寿を支えてきたひとつの要因とも言われる黒砂糖 。その完璧なミネラルバランスには、 いまさらながら脱帽です。
年々暑くなる夏を元気に乗り切るためには、今まで以上にミネラルの力が必要。黒砂糖パワーを上手に摂って、今年こそ夏バテ知らずといきたいものです。



砂糖の歴史をたどると

カロリー過多な現代では、とかく敵視されがちな砂糖ですが、 人間の歴史の中では、砂糖は長らく“薬”として珍重されてきた、貴重なものでした。
砂糖の原料であるサトウキビは南太平洋の島々が原産。東南アジアを経てインドに伝わり、インドでは2000年以上も前に、サトウキビの汁を煮詰めて作る砂糖造りが行われていたという記述があります。当時は食用というよりも、病気による衰弱や疲労回復に大きな効果を持つクスリとして使用されていました。サンスクリット語のSarkaraが英語のsugar やフランス語のsucre の語源になったとか。 日本語の砂糖−satou −という発音も偶然の一致ではないのかもしれません。
沖縄で黒砂糖作りが始まったのは、本土よりも一足早い17世紀の終わり頃。以来、土地の貴重な産物として、製法、食文化とも脈々と受け継がれてきました。沖縄が長寿の島であることはもはや定説ですが、黒砂糖を長年常用してきたことも、そのひとつの理由であると考えられています。



砂糖の種類は何による違いなのか

ところで、 砂糖の中には、 上白糖、三温糖、 和三盆糖などいろいろな種類がありますが、それらの違いは何によるものなのでしょう。
砂糖は大きく、含蜜糖と分蜜糖の二つに分けられます。原料のサトウキビを粉砕して圧搾機にかけ、汁を絞るところまでは同じですが、前者は蜜ごと煮詰めたもので、黒砂糖、和三盆糖がこれにあたります。後者は絞り汁を遠心分離機にかけてみつを振り分け、砂糖の結晶だけを取り出したもの。三温糖、グラニュー糖、上白糖はすべてこの分蜜糖に分類され、 さらなる違いは精製の度合いによります。
一方、黒砂糖の製法は、 絞ったサトウキビの汁を漉してかすを除き、石灰を加えて酸を中和させ、 同時に不純物を沈殿させて除去。 そうして取り出した純粋な液体を煮詰めて結晶化させるというものです。
両者の栄養価を比較すると、分蜜糖にはほとんどミネラルもビタミンも含まれていないのに対し含蜜糖である黒砂糖は、カルシウム、カリウム、ナトリウ、マグネシウ、マンガン、リン、亜鉛、鉄、銅といったあらゆるミネラルが豊富で、さらにビタミンB1やB2ばかりでなく、ナイアシン、パントテン酸などのビタミンB群がバランスよく含まれています。
このように黒砂糖にふんだんにミネラル、ビタミン類が含まれるのは、蜜をそのまま煮詰めることと、製造過程で石灰を加えてアルカリ性にすること、この二点によるのです。 では次に、 黒砂糖の具体的な効用を記しましょう。



カルシウムの補給にすぐれた効果を発揮

なんと黒砂糖100g中には240mg ものカルシウムが含まれています。数値だけを見ると、牛乳に匹敵するほどの量です。もちろん、牛乳とは一度に摂取する量が違いますから、牛乳と同じだけカルシウムが摂れると思うのは早計ですが、それにしても継続的に摂取することで、日常生活の中では大変な差がでてきます。黒砂糖のカルシウムは、サトウキビの絞り汁にも含まれていますが、製造過程で加える石灰の働きでさらに増加します。これは豆乳ににがりを加えて固めることで、豆腐のカルシウム含有量が大豆よりも高くなるのと同じ原理です。
人体にとってのカルシウムの重要性はいうまでもありませんが、特に更年期以降、カルシウムの流出の激しい女性は、若い時から意識してカルシウムを摂ることが大切。備えあれば憂いなし、日頃からの蓄積が大切です。
また、牛乳とあわせて摂ると、さらに吸収効率が高まります。意外な印象を受けるかもしれませんが、牛乳と黒砂糖の相性、なかなかのものです。もちろん、プリンやパンケーキなどの甘みを黒砂糖に変えて作ってみるのも名案です。



多彩なミネラル類とその効用

そのほかの微量ミネラルの効果も列記しましょう。まずカリウム、ナトリウは細胞の活性化には欠かせません。これらが豊富に含まれているため、調理に使う場合は、塩分を控えないと味が濃く感じられます。ということは、黒砂糖で甘みをつけると、自然に減塩につながるというメリットも出てくるのです。また、マグネシウムは現代病ともいえるストレスに対抗するのに必要。マンガンは骨の代謝に有効で、カルシウムとの協力でより効果的に働きます。リンはカルシウムと結合して、リン酸カルシウムという形で骨の主成分になる大切なミネラル。亜鉛は不足すると味覚や発育に障害を引き起こすばかりでなく、美しい髪の毛の維持にも支障が出ます。鉄分が大切なことはいうまでもありませんが、銅も同じく血液中のヘモグロビンの合成に関与しています。
こうした微量元素は、それぞれ必要な量はわずかであっても、ホルモンの合成や分泌を促したり、神経の伝達をスムーズにしたりと、身体を正常に維持していくには欠かせないものばかりです。ひとつの食品でこれだけバランスよく、多種のミネラルが含まれている食品は稀。黒砂糖の自然なミネラルパワーを利用しない手はありません。



ビタミンB群で夏バテ予防

黒砂糖には前述の通り、ビタミンB1、B2、ナイアシン、パンテトン酸などのビタミンB群が含まれていますが、それらはいずれも、糖質や脂質のエネルギー代謝の効率を促進する補酵素として働くので、疲労回復に効果ありです。糖分に即効性があるのはよく知られるところですが、精製した糖に頼りすぎると、あとで余計に疲れてしまうという現象がおきます。 が、ビタミンB群をたっぷり含む黒砂糖なら、一時的にエネルギーを供給するだけでなく、疲労の元凶である乳酸が体内にたまるのを防ぐなど、疲労を元から絶つための助けとなってくれます。ですから、疲れたな、と思ったときの黒砂糖なら安心、かつ合理的。糖分自体にそうしたビタミンが備わっているというのはまさに自然の摂理。黒砂糖は砂糖が“薬”として用いられてきた太古の時代の、本来の力をそのまま残しているのです。



天然のオリゴ糖ラフィノースの効果

こうしたミネラル類のほかにも、黒砂糖の糖分そのものの中にも有用な働きが認められ始めています。それは、天然のオリゴ糖ともいわれるラフィノースという物質で、細胞の免疫性を高め、ガンへの抵抗力が高まると期待されています。また、肝臓の代謝機能も高めますから、飲みすぎたな、と思ったときにひとかけ、飲み会の前にひとかけ、と意識的に黒砂糖を摂るのもよいかもしれません。さらに、ラフィノースには、胃や小腸では分解されず、エネルギーになりにくいという特徴があります。要するに砂糖でありながら、脂肪として蓄えられにくいというありがたい性質を持っているのです。ダイエット中の口さみしさのお伴にどうぞ。 さらにラフィノースは肌荒れ、シミ、ソバカス、生理不順にも効果も。どうやら黒砂糖は女性にとって願ってもない砂糖といえそうです。



黒砂糖の上手な利用法

黒砂糖が身体によいことはこれまでの説明で充分におわかりいただけたことと思いますが、現代の食生活の中では、お茶受けとしてかじっているだけでは飽きてしまうのも当然。そこで、黒砂糖を使ってできる簡単なデザートを紹介しましょう。
黒砂糖はブロック状のもの、砕いたもの、粉状のものが売られています。そのまま少しずつかじるには、ブロック状のものがこくも香りも高くおいしいのですが、料理やお菓子作りには、粉状のものが溶けやすく、便利。ブロックしかない場合は包丁で削って使いましょう。粉状の黒砂糖に水を加えて煮溶かし、濃いシロップを作っておくと、みつ豆などのデザートや、ホットケーキ、アイスクリームのソースなどにすぐ使えて便利です。

黒砂糖のゼリー 〜ラム風味〜
同じ砂糖きびを原料とする黒砂糖とラム酒。 相性のよさはいわずもがなです。

材料(4人分):黒砂糖(粉末)125g / 水 300cc / 粉ゼラチン 5 g / 水 大さじ2
1. 粉ゼラチンは分量の水大さじ2にふり入れ、電子レンジに20〜30秒かけて溶かす。

2. 鍋に黒砂糖と水300cc を入れて火にかけ、混ぜながら溶かす。

3. 砂糖が溶けたら火からおろし、ラム酒とゼラチンを加えよく溶かす。

4. ボウルに漉し入れ、 氷水にあてて粗熱をとり、 型に流して冷やし固める。好みでラム酒少々を加えた生クリームを軽く泡立てて添える。

バナナフォスター
ニューオリンズ屈指のレストランの名物デザートを黒砂糖を使ってアレンジ。

材料(4人分):バター 大さじ4 / 黒砂糖 1/2 カップ / シナモン 小さじ1/2 / 塩 少々 / バナナ 1本 / バニラアイスクリーム 適宜
1. バナナは皮をむき、2等分してから、縦半分に切る。

2. フライパンにバター、黒砂糖、シナモン、塩を入れ、シロップ状になるまで煮溶かす。バナナを入れて、バナナがほんのり温まるまでよくからめる。

3. ラム酒1/2 カップをふり入れてフランベする(火をつけてアルコール分をとばす)。 器に盛り、 アイスクリームを添える。

懐かしくて素朴な味の黒砂糖も、使い方次第で、今どきのおしゃれなデザートに早変わり。栄養価はもちろん、味や香りの面からも大きな可能性を秘めた素材なのです。


小松宏子) 


writer's eyes
ジャズと美食の都、ニューオリンズで、南部のプランテーション文化の面影を色濃く残すレストラン「ブレナンズ」を訪れたときのこと。20世紀初頭にここで発明され、一躍全米中に広まったというデザート、バナナフォスターをいただきました。たっぷりのブラウンシュガーをバターとともに煮詰め、バナナにからめ、最後にラム酒をたっぷりかけてフランベする一品です。テーブルサイドで、黒人のギャルソンが鮮やかな手つきで仕上げてくれた、熱々でそれはそれはおいしかったこと。ふんだんに砂糖きびを栽培していた地ならではのレシピなのでしょう。
アメリカのダークブラウンシュガーは日本の三温糖などよりはるかに重く、黒砂糖のごとき香りと風味があります。バナナフォスターのソースの独特のこくはまさに黒砂糖を思わせるものでした。ちょうど、NYの料理学校で習ったレシピの中にバナナフォスターがあり、黒砂糖に替えて作ってみたところ、我ながらなかなかのでき。上記にレシピを記しましたので、興味のある方はお試しください。



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