2002.10.23号




   多くの女性が抱えている「ムーンサイクル」にまつわる悩み。「月経不順」「腹痛、腰痛」にとどまらず、月経前後に「抑うつ気分」を訴えたり冷え、のぼせ、動悸や息切れを感じたり、という経験はありませんか?
 不規則な月経周期、さまざまな心身の不調……。「もしかして私、更年期!?」と思いつめて、婦人科に来院する女性が増えているそう。そこで今回は専門の先生に、このデリケートな症状についてQ&A形式でお話を伺いました。
 
◆お話をうかがった方
 小川隆吉先生
医学博士。日本医科大学卒業後、都立築地産院の産婦人科医長等を経て95年東京都豊島区に女性のための総合クリニック「小川クリニック」を開業。著書に「更年期を上手に乗りきる本」「不妊の最新治療」(ともに主婦と生活社)がある。http://www.ogawaclinic.or.jp/

(■→ライター渡邉 ◇→小川先生)


■そもそも、「更年期」の身体はどのような状態なのでしょうか?

◇女性の生理周期は、「性ホルモン」の分泌で成り立っていることはみなさんも何となく知っているかと思います。女性の性ホルモンには排卵を促し妊娠のお膳立てをする卵胞ホルモン(エストロゲン)と、妊娠後に子宮内膜を厚くするなど受精卵の成長に関わる黄体ホルモン(プロゲステロン)がありますが、いずれも脳下垂体の指令で性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)がつくられ、その刺激によって分泌されるのです。
 閉経が近くなると、まず卵巣の機能が衰え、中でつくられる卵子(卵胞)の成熟も鈍ります。卵子が育たないわけですから排卵するために必要なホルモンであるエストロゲンの分泌も少なくなります。
 ところが、閉経前後の不安定な身体のもとでは、脳下垂体はこの卵巣の変化に関わらず「エストロゲンを出しなさい」と性腺刺激ホルモンを分泌する指令を出し続けます。エストロゲンはもう出ないのに、刺激するホルモンだけは大量に出る、このホルモンバランスのくずれが、のぼせやめまい、情緒不安定、不眠など、いわゆる「更年期障害」と呼ばれる不快な症状を引き起こすのです。



■20代〜30代で更年期って起こりうるのですか?

◇閉経の年齢は平均51歳と言われています。したがって更年期は卵巣の機能が衰え始める40代後半から始まる人が多いようです。もし20代〜30代で月経が止まり、下記のような心身の症状があらわれた場合は、病気や何らかの原因で一般より早く閉経してしまう「早発閉経」が疑われます。

●更年期障害にともなう症状●

・ 顔がほてる ・汗をかきやすい
・顔や手足が冷えやすい   ・ 息切れ、動悸がする  
・寝つきが悪い、
 眠りが浅い
・怒りやすく、
 すぐイライラする
・くよくよしたり、
 憂鬱になることがある
・ 頭痛、めまい、
 吐き気がする
・疲れやすい ・肩こり、腰痛、
 手足の痛みがある
(小山嵩夫先生「簡略更年期指数(SMI)」より抜粋)

 このように、早発閉経により一般的な年齢より早く更年期症状が起こることを「若年性更年期障害」と言います。



■えっ!? では月経不順、体調不良は閉経が早まるサインなのですか?

◇あまり心配しないでください。確かに若いのに更年期のような症状が見られる場合は早発閉経の疑いが持たれますが、実際に早発閉経となる方はそれほど多くありません。むしろ、20代〜30代の月経不順にともなう心身不調は、ストレスやタバコなど外部からの刺激によるホルモンのアンバランスから引き起こされる方が多いのです。つまり、卵巣そのものは衰えていなくても、スムーズに機能させるために必要なホルモンがきちんと出ない、ということですね。
 先ほど、性ホルモンの分泌には脳下垂体からの指令が不可欠だと話しました。脳下垂体はさらに、間脳にあり自律神経、内分泌系の中枢である視床下部の制御下にあるのですが、ここは実は外部からの影響をうけやすい非常にデリケートな場所。ストレスや急激なカラダの変化により、ホルモンを分泌せよという指令が出なくなってしまうのです。


■なるほど、忙しい現代女性はストレスの影響を大きく受けそうですね。ホルモンバランスを崩す要因はほかにどのようなものがありますか?

◇ホルモン分泌を崩す要因は主に4つあります。
・ストレス 細かいことが気になる、くよくよしがちな人は視床下部が悪影響をうけホルモンが分泌されにくく
・太りすぎ/激やせ 特に3カ月以内に15〜20%以上減量した場合、月経が止まりやすい
・激しい運動 厳しいトレーニングや食事のコントロールがストレスとなる
・タバコ 血管を収縮させ、各臓器にいきわたる血液の量を減少させてしまう
 なお、最近増えている月経不順の原因に「多胞(たのう)性卵巣症候群」というものがあります。これは、卵巣の皮膜が厚くなり、成熟した卵子が外に出にくい(排卵しにくい)病気です。卵巣は排卵されなかった卵胞がたまって肥大化し、やはり月経不順、停止につながります。
 いずれの場合も放っておくと不妊の原因になります。おかしいな、と思ったらまず基礎体温をつけること。体温の高低はホルモン分泌の変化をあらわします。その記録を持って婦人科にいけば、診断の際の重要なデータとなり、早く適切な処置をしてもらえます。

●有効利用したい「レディースドック」●
 月経不順はさまざまな病気を知らせるサインなのに、いざ婦人科へとなるとなんとなく気後れして…という話はよくあること。でも、我慢できないほどになってから病院にかけこみ、治療に思わぬ時間と費用がかかってしまった…というのも避けたいものです。
 自分の健康は自分で守りたい女性が、気兼ねなく婦人科を訪れられる機会のひとつとして最近増えているのが「レディースドック」。いわば「人間ドック」の女性版で、検査内容は一般的な婦人科検診に加え、子宮けいがんや筋腫、腫瘍の有無、性病検査などで、通常の人間ドックではオプションになってしまうものも多く含まれています。
 検査時間はざっと20分程度。費用は保険適用外のため3万円(ただし病気がみつかれば保険の対象になる)かかりますが、長くイキイキと過ごすためのメンテナンスと思えば高くない? ストレスにさらされ心身の調子を崩しやすい現代女性をサポートする心強い味方といえるでしょう。(時間や費用は「小川クリニック」の場合)



■では、このような症状に対する有効な治療や改善法は?

◇婦人科で検査をして、もし卵巣の機能が停止、またはホルモンの分泌量が少ないという場合には、どの器官にどの程度の異常があるかを調べ、少なくなっているホルモンを補充したりホルモン分泌を促す物質を投与したりという治療を検討します。
 器官やホルモン量には異常がなく、ストレスなどの外部からの刺激でホルモンの分泌がスムーズでない、という場合には、まずは自分自身の生活習慣を見直して、本来のホルモン分泌が行われる環境をつくってあげることが大切です。

<編集部がセレクトした「若年性更年期を防ぐ」生活習慣>

●食事の工夫●
 「若返りのビタミン」として知られる「ビタミンE」はホルモンバランスの調整やホルモンの分泌に関与する自律神経のコントロールに効果的と言われています。末梢神経の血流を良くする働きもあるので、多くの血液が集まる子宮まわりにとっても大切な栄養素。さばやいわしなどの青魚、ナッツ類、さつまいもに多く含まれています。

●呼吸の工夫●
 人間はストレスがかかりイライラしているときに、自然と呼吸が浅く不規則になっています。これを逆に利用して、意識してゆっくりと深い呼吸をすれば、リラックス効果が得られます。
●適度な運動●
 デスクワーク中心の人は慢性的な運動不足。動かないとカラダに取り込まれる酸素量も少なくなり、血液循環も悪く、栄養の代謝も鈍るという悪いことだらけに。カラダ全体の機能がスムーズでなければ当然月経周期にも影響が出ます。先に書いたようにハードな運動、トレーニングは逆効果ですが、適度な運動は習慣にしたいもの。脈拍が(220−年齢)×0.75程度で一日30分、週4回の運動(ウォーキング、ジョギングなど)が「適度」の目安です。
●エッセンシャルオイルやハーブの活用●
 カモミールやゼラニウムにはイライラ感やとらえどころのない鈍痛、カラダのだるさを緩和するのに役立つハーブ。エッセンシャルオイルやハーブ自体が持つ有効成分に加え、良い香りが精神面の安定を導きます。ユーカリやセージもスッキリと心身を整える働きがあります。
●悩み相談でストレス軽減●
 仕事や人間関係の悩みからくる精神的なストレスは、ひとりで抱え込まず周りに話をする方が楽になります。とはいえ、月経不順など身体の悩みをともなう場合はなかなか打ち明けにくいもの。最近では婦人科でも女性外来や心療内科を兼ねているところもあるので、まずは相談するのも手。更年期に苦しむ女性の支えにと96年に設立されたボランティアグループ「メノポーズを考える会」http://www.geocities.co.jp/Beautycare-Venus/2220/
では電話による無料相談や近所の婦人科医の紹介もしています。



渡邉真由美) 

writer's eyes
 女性の更年期に対して、まだまだ日本では「みんな経験することだから、仕方ない」「がまんすればそのうち過ぎていく」という認識が世間一般の見方なのかなぁと日ごろから歯がゆく思っていました。初潮のときと違って更年期は母から娘へ教えるといった「世代間の継承」も少なく一人で悩んでいる女性も多いのではないでしょうか。でも今回お話をうかがった小川先生は、更年期におけるQOL(生活向上)もよく考えておられ、ただ治療するだけではなく、人間としてより豊かに生きることを追求する姿に心打たれました。と同時に、仕事に家事に精一杯の20〜30代女性も、自分自身の身体を大事にすることに対してもっと真摯に貪欲に向かい合うべきでは、とも思いました。その姿勢こそが後々訪れる身体の変化に対してもうろたえたり落ち込んだりせず、前向きに生きる気持ちにつながり、またそれを受容する社会をつくる、そう信じています。



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