2002.11.13号




  どちらも、小さな身体に秘められたパワーは想像以上。
ミネラル、ビタミン、さらには食物繊維の宝庫です。
その栄養価の高さは、長い歴史の中でも証明ずみ。
毎日の食生活の中に上手に取り入れて、元気ときれいの味方につけましょう。


嗜好品からヘルシーフードへ、イメージの転換

 日本人にとって、ナッツやドライフルーツは、お酒のおつまみやお菓子の材料など、嗜好品の一部といった印象ですが、実は両方とも、驚くほどに栄養豊か。若さを保ち、きれいを促す秘密がたくさん隠されています。
 世界の中でも、最もこれらを食べるのは中東諸国。いくつかのナッツやドライフルーツの原産地であると同時に、厳しい気象条件を乗り切るための必然だったのです。それらをふんだんに使った伝統的な料理やお菓子は今も脈々と受け継がれています。また昨今、特に消費がのびているのがアメリカ。健康にはひと一倍敏感な彼らは、素早く、手軽に、しかも確実に栄養を補給できる利便性を見逃しませんでした。もちろん早くからお菓子の文化が開けたヨーロッパの人々にとってもナッツやドライフルーツは欠かせない食材です。
 それに比べて日本の消費量ははるかに少ないのが現状ですが、遠く、古代に想いを馳せれば、広葉樹の森にたわわに実る、とちの実やくるみはそのまま栄養豊かな食料になっていたはずです。くるみ和えなどはその名残の料理でしょう。科学の目でそれらの効能を解明した今、ヘルシーフードとしての認識を新たにしたいものです。



命を丸ごと食べるナッツの栄養価と効用 
ナッツとは木の実、つまり木の種です

 土の上に落ちれば、発芽できるだけの生命力、豊かな栄養分を内に秘めています。そのパワーを丸ごと食べるのですから、身体によくないはずがありません。個々の木の実に、栄養的な差異はありますが、概していえることは、脂肪分の組織がほとんど不飽和脂肪酸であるということ。また、老化防止の救世主であるビタミンEを豊富に含むということがあげられます。また、脂肪分が潤沢なためにカロリーが高いことも、古くは貴重な食材たる所以でした。

[不飽和脂肪酸の効能]
脂肪中の脂肪酸は、炭素の結合の状態によって飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大別されます。飽和脂肪酸は動物性脂肪に多く含まれ、血液中のコレステロールを増やす点が問題になっています。不飽和脂肪酸は細胞膜の形成、 ホルモンの合成や調整など、 正常な生理機能を維持するのに欠かせないばかりでなく、コレステロールを減少させるという利点も備えています。さらに不飽和脂肪酸は多価脂肪酸と一価脂肪酸に分かれ、それぞれリノール酸やリノレン酸は多価脂肪酸の代表、オレイン酸は一価脂肪酸の代表です。 多価脂肪酸が、悪玉、善玉両方のコレステロールを減らしてしまうのに対し、一価脂肪酸は悪玉だけを減らすという、 まさに理想的な働きをします。

[ビタミンEが老化防止に効くわけ]
人間の身体を形成している無数の細胞は、それぞれ細胞膜で覆われています。この膜を構成する物質の一つが不飽和脂肪酸(代表的なものが前述のリノール酸)です。 この膜は、細胞を守る大切な働きをする反面、酸素と結合して酸化し、有害物質である過酸化脂質に変化しやすいというやっかいな性質を持っています。これが増えると細胞の機能が衰え、老化が進むばかりでなく、血管の壁にこびりついて動脈硬化、脳血栓、心筋梗塞などの原因となります。ビタミンEは、細胞膜が酸化するのを防ぐ力、つまり老化を防止する力を持っているのです。
飽和脂肪酸やビタミンEが豊富なナッツはまさに天の恵み。カロリーが高いため(アーモンドで100 g610 kcal) 、消費カロリーを確保するのが大変だった昔ならいざ知らず、カロリー過多な現代においては、食べ過ぎは禁物です。しかしお酒の席では、少量で高カロリーを摂取できるため、すばやく胃を守り、飲み過ぎを防ぐなどの利点があります。そうした性質を利用すると同時に、毎日少しずつ、定期的に食べるのが、賢い摂取法といえるでしょう。

以下、それぞれのナッツの特製です。

アーモンド
アーモンドの原産地は、古代文明の発祥の地、チグリス・ユーフラテス川流域を含む、アジア西南部。旧約聖書にもたびたび登場する貴重な食べ物でした。きっと先人は、すぐれた栄養価に気付いていたのでしょう。50%以上を占める脂質の約9割が、悪玉コレステロールだけ減らすオレイン酸。また、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛などのミネラルバランスに優れています。なにしろ、100g中のカルシウム含有量はナッツの中でも、トップ。ビタミンB群、ビタミンE、食物繊維も豊富と、理想的な栄養の持ち主です。

ヘーゼルナッツ
ヘーゼルナッツはヨーロッパが原産で、古くからヨーロッパでは、重要なお菓子の原材料として珍重されてきました。日本語訳はハシバミ、その昔は和種のハシバミも食用にされていたとか。60%以上含まれる油脂類は、すべて不飽和脂肪酸でコレステロールの心配は無用。カルシウムや鉄分の摂取も期待できます。

ピスタチオナッツ
美しい緑色と風味のよさ、また高価なことから、ナッツの女王と呼ばれていますが、栄養価においてもトップクラス。原産は古代トルコ、ペルシャなどの地中海沿岸で、長い間アラブ系、トルコ系の人たちに親しまれてきました。飽和脂肪酸が究めて低く、オレイン酸、リノール酸をたっぷり含みます。小さい身体ながら、食物繊維が全体の9.8 %と豊富なのも利点。また他のナッツに比べても、鉄分、 カリウムの含有量は群を抜いています。スナックのほかには、ペースト状にしてケーキやアイスクリームにも。

カシューナッツ
原産は南米ブラジル。カシューナッツの栄養特性はアーモンドに似て、 脂質の約60%が一価脂肪酸のオレイン酸。また、ビタミンB1の含有量はナッツの中でも最大。 マグネシウムや鉄、 亜鉛の含有量も優秀です。 中国料理の鶏肉とカシューナッツの炒めものは有名ですが、 糖質が多く、歯応えが柔らかいからこその料理です。



太陽の力で栄養分が凝縮した、ドライフルーツの特徴と効用

 ドライフルーツとひと口にいっても、誰もがよく知るレーズンから、昨今はいちごやラズベリー、マンゴー、桃……まで、多種多様な果物がドライにして食べられています。個々の果物により栄養価に違いはありますが、いずれもドライにすることで水分が抜けて成分が凝縮し、フレッシュな状態で食べるより効率よく栄養をとることができます。ドライフルーツ全体に共通している特徴は、鉄分、カルシウムなどのミネラル分が豊富なことと、食物繊維がふんだんに含まれていること。といっても、直接100 gあたりの含有量を比べるとナッツには劣りますが、一度に食べられる量、また摂取カロリーを考慮に入れれば、その効能は双璧です。(プルーンで100 g237 kcalですから、 カロリーはアーモンドの1/3 強。 同カロリーを摂取した場合では、 ミネラルの摂取量は、 ややプルーンに軍配が上がります)
 また、 糖分が吸収されやすい形で含まれているので、 空腹のときに少量のドライフルーツを食べると、 すぐに血糖値が上がって空腹が解消され、凶暴(?)な食欲が抑えられます。少量の糖分で空腹がいやされ、 ビタミンやミネラルの補給になるのですから、一石二鳥。「小腹がすいたときにドライフルーツ」の習慣は、これからの健康を考えたダイエットには、 ぜひ取り入れたいアイディアです。

以下、それぞれのドライフルーツの特徴です。

レーズン
最もなじみの深いドライフルーツですが、通常のレーズンのほかに、小粒のカレンズ、 薄い茶色のサルタナ、 中国産の緑色のシルクロードなど、さまざまな種類が世界各地で作られています。 今や一大産地であるカリフォルニアでは、 昼と夜の温度差でぶどうの糖度が増し、 風味豊かなレーズンが作られます。他のドライフルーツ同様、鉄分、カリウムの含有量が高く、また食物繊維も著しく豊富なため、医療の現場ではフルーツファイバーの天然濃縮源として、心臓病や大腸ガンなどの予防に役立っています。また、ガンや動脈硬化、アルツハイマーの予防に効果的とされるフラボノイド(ポリフェノール、つまり抗酸化物質の一種)も多く含まれています。


プルーン
健康にいいドライフルーツというと、まず思い浮かぶものがこれ。プルーンとは、プラムの中でも、発酵せずに乾燥できる種類のものだけを指していう名前です。原産地はコーカサスとカスピ海沿岸の西アジア。ギリシアを経てヨーロッパに広まりましたが、現在は世界のプルーンの3/4 がカリフォルニアで生産されています。鉄分に関しては、 単に豊富なだけでなく、吸収されやすい組成を持っているのが大きなメリット。豊富なカリウムは、 体外に排出されるときにナトリウムを伴うので、減塩効果も。食物繊維の多さから、便秘に効くのもよく知られるところです。
また、なにより、プルーンを特徴づけるのが、抗酸化物質の含有量が全食物中トップクラスであるということ。これはベータカロチンが極めて豊富なことが一因です。抗酸化物質には前述の通り、身体や脳の細胞に働きかけ、老化のプロセスを遅らせる力があります。
また、低脂肪で、抗酸化物質を多量に含む食品は、一般にガンのリスクを軽減させることもわかってきており、 ガン予防にも期待が持たれています。

ブルーベリー
歴史的にはアメリカ北部が原産の古い果実です。ブルーベリーは目にいい果物として日本で一躍有名になりましたが、これは、ブルーベリーの青色を醸すアントシアニン色素の活躍によるもの。ものを見るのに重要な働きをする、網膜内のロドプシンという物質の再合成を活性化させるためです。現在では、この色素から抽出された成分が、医療の現場でさかんに使われています。
日本では、 ドライブルーベリーはまだあまり一般的ではありませんが、 乾燥させても色素成分はまったく減少することなく、むしろ凝縮されますから、フレッシュな状態で食べるよりも効率よく摂取できるというメリットがあります。
ほかにも、 ブルーベリーには、血管壁の弾力を維持して血管を保護したり、 新陳代謝を促進す働きがあることもわかってきています。

いちじく(フィグ)
いちじくは無花果と書く通り、 枝に花を咲かせずに、 果実の内側に開花させる神秘的な果物です。 原産地は地中海沿岸や西アジアで、旧約聖書の中でアダムとイヴの食べた果物として、古くから人間の歴史に深く関わってきました。
栄養価では、カルシウムに注目。100 g に換算すると、 牛乳の約1.5 倍のカルシウムが含まれていることになります。 ほかのドライフルーツに比べておおぶりで、 一度にたっぷり食べられますから、カルシウムの補給源としても実際的。 もちろん食物繊維や鉄分も豊富。 またカリウムも豊富なので、 塩分が気になる人にはおすすめです。
ドライフィグが日本で手に入りやすくなったのは、 最近のこと。 そのまま食べたり、刻んでお菓子やパンの材料にはもちろん、 ワインや紅茶で煮てコンポートにしてもよいでしょう。

アプリコット(あんず)
あんずの原産地は中国北部で、 シルクロードを経て中央アジアからヨーロッパへ伝わりました。日本へは遣唐使によってもたらされたのが最初です。中国では食用のほか、 種子の中の白い仁が薬用として珍重されてきました。中国で医者が「杏林」と呼ばれるのはこのためです。
特に漢方では、身体を温める効果があるとされ、 毎日少しずつ食べることで、女性の大敵である冷え症が改善されると言われています。栄養成分では、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル類が豊富なばかりでなく、抗酸化作用のあるベータカロチンが、非常に多く含まれています。 活性酸素の発生を抑える酵素は、年齢とともに衰えがちですが、ベータカロチンがこの働きを補ってくれるのです。

各国の、そしてアメリカのドライフルーツ
湿度の高さのせいか、日本の風土では、ドライフルーツ作りという食習慣は生まれませんでした。しいていえば、干し柿がドライフルーツですが、天日ではなく寒干しですから、ちょっと意味合いが違います。しかし、元来乾燥した気候と強い日差しの西アジア、地中海周辺では、いつのまにか自然にドライフルーツが生まれ、人々の生活に深く関わってきました。近年のドライフルーツの一大産地であるカリフォルニアも、まさしく肥沃な土壌とあふれんばかりの陽光を生かしての産業です。そして、従来の伝統的なドライフルーツには見られなかった、洋梨、桃、いちご、りんご、チェリーなど、それこそドライになるものならなんでも天日で干して楽しんでいます。まさに、既成概念にとらわれない、クリエイティビティーに富んだアメリカの食の姿勢です。それらからまた、オリジナリティ豊かなレシピも生まれています。



食べ方いろいろ

 ナッツとドライフルーツが一度にたくさん手軽に摂れる食べ物の代表といったら、まさに、アメリカが本家本元のシリアル類。グラノラタイプのものからバータイプまで、さまざまです。日本でも商品が増えていますが、ナッツとドライフルーツの組み合わせ方、またオーガニックか、糖分控えめかなどは、メーカーやブランドでさまざまですから、好みと用途に合わせて選んでください。また、クッキー、マフィン、パウンドケーキのベースの材料にこれらのシリアルを使って、ヘルシーなお菓子作りに挑戦てみるのもよいでしょう。ほかにも、日々の食卓に気軽にドライフルーツ&ナッツを取り入れるための、ヒントになるおいしいレシピを紹介します。


ドライフルーツ&ナッツブレッド

材料(21 cmのパウンドケーキ型1台分):くるみ 30g、スライスアーモンド 30g、ドライブルーベリー 50g、ドライラズベリー 50g、ドライアプリコット 50g、ドライフィグ 100g、薄力粉 250g
A(ベーキングパウダー 小さじ3、塩 ひとつまみ、無塩バター 80g、砂糖 100 g、卵 1個)
B(ヨーグルト1/2 カップ、牛乳1/2カップ)
作り方:
型には薄くバター(分量外)を塗り、 冷やしてから小麦粉をふり、 余分な粉をはたき落としておく。
1 ナッツ類は低温のオーブンで空焼きする。くるみは粗みじんに刻み、ドライフルーツ類も同様に粗みじんに刻む。Aの粉類は合わせてふるっておく。
2 ボウルにバターを入れ、泡立て器で白っぽくクリーム状になるまで混ぜ、砂糖を加えてさらによく混ぜる。
溶きほぐした卵を2回に分けて2に加え、そのつどよく混ぜる。なめらかになったらBを混ぜ、さらにふるった粉類を2回に分けて加え、軽く混ぜる。
最後に1 のナッツとドライフルーツをさっくり加え混ぜ、型に流し入れる。180度Cのオーブンで50分焼く。 中心に竹串をで刺して何もついてこなければできあがり。


ナッツスパイスライス

材料(4人分):米 2 合、玉ねぎ(みじん切り) 1/2 個分、水 2カップ、固形スープの素 1/2 個、皮つきアーモンド( 薄切り) 大さじ2、カシューナッツ(粗みじん切り)大さじ2、クミンシード 小さじ1/4、黒粒こしょう 10粒、カレンズ( 小粒レーズン) 大さじ2、オリーブ油 大さじ2、バター 大さじ1、塩 適宜
作り方:
1 フライパンにオリーブ油とバターを熱し、玉ねぎのみじん切りを炒める。しんなりしたら米を研がずに加え、透き通るくらいまで、さっと炒め、スパイスとナッツを散らす。
2 固形スープを溶いた湯を加えて、塩、こしょうで味を調え、ふたをして強火にする。沸騰したら火を弱め、そのまま12〜13分ほど熱して炊き上げる。カレンズを散らし、5分蒸らしてできあがり。


ドライフルーツのワインコンポート

材料(4人分):ドライフィグ 6個、プルーン 6個、レーズン 大さじ2(など、ドライフルーツはお好みで)、グラニュー糖 80g、水 大さじ3、熱湯 200ml、赤ワイン 200 ml、シナモンスティック 1本、クローブ 2本、黒粒こしょう 5粒
作り方:
鍋にグラニュー糖と水を入れて弱火にかけ、静かに煮詰め、全体が茶色く色づいてきたら火からおろし、熱湯を加えてカラメルを溶きのばす。粗熱がとれたらワイン、ドライフルーツ類、スパイス類を加え、15分ほど煮て、 そのまま煮汁に浸しておく。
室温でも冷蔵庫でよく冷やしても。


小松宏子) 

writer's eyes
アメリカのスーパーやデリで、 数十種類のナッツや木の実がうず高く積み上げられている光景をよくみかけす。 初めは 、アメリカ人はこんなにたくさんおつまみを食べるのかしらと、 驚いたものですが、 注意して彼らの食べ方を見ていると、朝食に、スナックに、夜食に……と実に積極的。どうやら単なる嗜好品ではなさそうです。
それらが身体にいいことは知っていましたが、栄養価を調べてみると、改めてそのパワフルさに驚かされました。そして初めて、彼らが単なる嗜好品としてではなく、栄養補給の意味合いを込めて、ひんぱんに食べているのだということがわかったのです。カリフォルニアという、ナッツやフルーツの一大産地を控え、食事に、デザートに、スナックに、実にバリエーション豊かに楽しまれています。反面教師となる食習慣も多いアメリカですが、これは大いに見習う価値あり!



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