2003.4.9号




幻の品も出現するほど、ブームが続く本格焼酎。
芋、麦、そば……、原料の風味が際立ったおいしさはもちろん、酔い醒め爽やか、ローカロリーなど、身体によいというイメージが浸透してきていることも大きな理由。
そして昨今の注目は、血液をサラサラにする働きがあるということ。
味わいと健康の両面から、大いなる本格焼酎の魅力を探ります。


焼酎とはどんなお酒

 世界で飲まれているお酒は、造り方によって、醸造酒、蒸留酒、混成酒の3つに分けられます。醸造酒は穀物、果物を発酵させて造るお酒で、米からできる日本酒、麦から造るビール、ぶどうから造るワインなどがその代表。
 蒸留酒は、醸造酒をさらに蒸留して造るお酒。麦の発酵したものを蒸留するのがウイスキー、ぶどうの発酵したものを蒸留するのがブランデー、そして芋、麦、そばなどを発酵させて蒸留したものが焼酎です。沖縄の泡盛りも、100 %米麹だけで発酵させた蒸留酒、れっきとした焼酎の仲間です。このほか、ジン、ライムなども蒸留酒のグループ。
 混成酒は醸造酒や蒸留酒に薬草や果物、花、香料などを混ぜて造るお酒で、リキュールなどを指します。



日本の蒸留酒・焼酎の歴史

 焼酎は上記の通り、蒸留酒に属しますが、ウイスキーは麦芽を使い、焼酎は麹を使うというように、それぞれ発酵の過程が異なります。日本古来の焼酎を造る技術も、実は14〜15世紀頃にタイから沖縄に伝わったと言われています。その証しに、現在でも沖縄では泡盛の原料にタイ米が使われているとか。その後、鹿児島で盛んに造られるようになり、全国に広がったのです。
 ではなぜ、鹿児島なのでしょう。それは、南九州の気候が温暖で、清酒造りに適さなかったから。鹿児島でも、もろみが腐敗しないような清酒造りを努力してきましたが、どうしても他県のレベルには追いつけません。ならば旨い焼酎を造ってやるそんな意気込みで、麹と水だけで仕込む一次仕込みと、さつま芋など主原料を加えて発酵させる2次仕込みの、2 段階に分けるという方法を編み出しました。これにより、焼酎のレベルは飛躍的に向上したのです。痩せたシラス台地から良質のさつま芋がとれる鹿児島は、またたくまに焼酎の本拠地となりました。同時にこの2次仕込みの発明によって、他にも麦、そば、米、黒糖、とうもろこしなど、さまざまな原料による、焼酎の仕込みが可能になり、焼酎作りが全国に広がっていったのです。
 ところで焼酎は、酒税法上「甲類」「乙類」に分類されることはご存知でしょうか。甲類は明治末期に西洋より伝えられた技術によって造られる、ホワイトリカーと呼ばれるもの。いわば限りなく純度の高いアルコールを作って、水で割ったようなものです。一方、乙類は前述の麦、芋、米、そばなどを原料に、日本の昔ながらの製法で作られている焼酎。これをわかりやすいよう、昨今では「本格焼酎」と呼び分けています。



焼酎の第二次ブームが今、なぜ?

 本格焼酎の躍進により、すっかり見直されている焼酎ですが、このブームを少し紐解いてみましょう。
 戦後は長らく、焼酎といえば、オジサンが飲む安い酒といったイメージが定着していました。それを払拭したのが、1980年代の第一次焼酎ブーム。下町のナポレオンというキャッチフレーズで登場した「いいちこ」などにより、飲み口すっきり後味さわやか、料理の味を邪魔しないお酒として、一躍支持されるようになったのです。これをきっけに酎ハイやサワーという形になって、居酒屋ブームとともに若者や女性に広く浸透していきました。
 それから10年以上、地酒、吟醸ブーム、ワインブームなどを超えて、酎ハイやサワー類はドリンクメニューの定番として、しっかり定着しました。
 こうして底辺を広げたあとに、ここ数年、「森伊蔵」、「百年の孤独」、「天使の誘惑」などといった、名前はきっと耳にしたことがある、クオリティの高い本格焼酎が一躍脚光を浴びることになるのです。それらに後押しされて、焼酎を味わって飲むというスタイルは不動のものとなりました。なにしろ、九州地方の本格焼酎は、平成10年度でその5年前の5割増し。11年度にはさらに6%増しというのですから、勢いのほどが伺えます。



糖分が低く、カロリーが低いお酒

 こうした焼酎ブームの背景には、味本位の醸造姿勢に加えて、身体にいいという健康指向のファクターが大きく働いていることも否めません。
 その一つが、数あるお酒の中でもカロリーが低い酒であるということ。女性にとっては何よりの朗報です。アルコール度数が高いお酒なのにと不思議に思われるかもしれませんが、他の醸造酒などと比べて糖分が少ないのです。確かに辛口といわれるワインや日本酒と比べても、飲み口はずっとすっきりしています。このキリッとした味が、カロリーの低さにつながっているのです。またアルコール度数が高いため、水やお湯で割って飲むことが多く、結果的には摂取量に換算すると、ワインや日本酒より少ないということも言えるでしょう。



酔い醒めすっきり、二日酔いしないお酒

 また「焼酎はワインや日本酒に比べて翌日に残りにくい」とは、お酒好きなら誰しも口にする言葉。これは、科学的にはまだ解明されていませんが、醸造酒と蒸留酒の違いによることは想像に難くありません。こんな実験があります。両者を加熱してどんどん煮詰めていくと、蒸造酒には不揮発性物質というどろどろとしたものが残るのに対し、蒸留酒は蒸発してしまい、ほぼ何も残りません。二日酔いにはこの不揮発性物質が大きく関与しているのではないかと言われています。酒の中に不純物が多く含まれるほど悪酔いするわけですから、混ざりものがない蒸留酒が、二日酔いしないという説は正しいといえそうです。不揮発性物質が、二日酔いの正体アセトアルドヒドを分解しにくくしているのかもしれません。



血液をサラサラにし、血栓を予防する

 洋の東西を問わず、蒸留酒は薬として開発されてきた歴史を持っています。その証に西洋ではワインを蒸留したスピリッツを生命の水(オードヴィ)と呼んだほど。 日本でも江戸時代には焼酎は医薬品として珍重されました。 先人たちは、 経験を通して、焼酎の効能を熟知していたのです。
 そして焼酎の効能として、最近最も注目を集めているのが、本格焼酎が血栓症予防に大きな効果があるということ。血栓というのは、出血した場合の血を固めるために必要なもの。しかし、役目を終えた血栓がいつまでも残っていると、血管が詰まって心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症を引き起こすことも。ですから、速やかにこれを溶かさなければなりません。血栓症は、血栓を作る力が大きすぎるのではなく、溶かす力が弱まったために引き起こされる病気なのです。
 飲酒後の血液を採取して、その血液から血しょうを取り出し、さらにそこから血栓溶解酵素だけを分離して、その量と働きの強さを調べる実験をしたところ、焼酎には群を抜いて、血栓溶解酵素を増やす力があることがわかりました。 ちなみにワインの約1.5 倍、ビールの1.6 倍、清酒の1.3 倍。また同じ焼酎の中でも本格焼酎のほうが、甲類焼酎よりも高い数値を示します。つまり本格焼酎を飲むと、その成分の何かが血栓を溶かし、血管がつまるのを予防してくれることが明らかになったのです。
 また、嬉しいことにこの効果は、焼酎のアルコール分を飛ばしても変わりません。料理で普段日本酒を用いているところを焼酎に変えれば、恒常的な効果が期待できることでしょう。



原料別の、料理との相性

 料理の話が出たところで、食べ物との相性を少し。焼酎は芋、そばなど原料による風味の違いも大きな楽しみです。一般に料理を邪魔しないお酒といわれますが、それぞれ、どんな料理の味をひき立ててくれるのでしょう。

芋焼酎 原料を明確に感じさせながら、しっかりとふくよかな味わいが特徴。旨み成分、油脂成分の多い食材が合う。例えばしょうゆやみそでしっかり味つけした、豚の角煮など。
麦焼酎 すっきりとドライな口当たり。軽く香ばしい辛口タイプ。本格焼酎の中では最も料理を選ばないマルチタイプ。
そば焼酎 そばがらに似た香ばしさと、透明感のある酒質。軽快でドライな苦み成分が特徴。こちらも料理を選ばないが、より軽やかな組み合わせを意識して。
泡盛 独特の個性と厚み、芳醇でインパクトの強い香りはやはり沖縄料理との相性抜群。



ちょっと通の、 おいしい飲み方

 ストレート、 ロック、 水割り、 お湯割り、 炭酸割り…、 好みに応じてさまざまな飲み方が楽しめるのも、 焼酎のいいところです。 なかでも、 焼酎ならではの飲み方といえば、 お湯割りでしょう。

お湯割を上手に作るには?
 焼酎が先か、 お湯が先か、 迷うところですが、 これは絶対にお湯から。 温かい湯を先に注ぐことで、後から注がれる温度の低い焼酎はグラスの底まで行き渡り、お湯と焼酎がじっくりと混ざり、最後まで温かいお湯割りを楽しむ事ができます。それにお湯を先に入れることでグラスも温めることができ、手に持ったときに、より一層美味しそうに感じることができるのです。 焼酎を先に入れた場合は、グラスの底まで温まりにくく、飲んでいる途中で冷めてしまいますから。
 逆にこれだけは避けてほしいのが、やかん、ポット等で沸騰している熱いお湯で焼酎を割ること。温度が高いと、香りがキツく鼻にツゥーンとくることがあるので、お湯割に親しんでいない、初心者は特に気を付けて。

もう一歩こだわるのなら、 黒ジョカを
 黒ジョカとは、 焼酎をお燗をするための専用の焼き物のこと。 本場では、 今でも黒ジョカを使って飲む人が多いそうです。 では、正式な飲み方を伝授しましょう。「水と焼酎を黒ジョカに入れ、 一晩おいて馴染ませる(水はなるべくミネラルウォーターを)。 翌日直火にかけてお燗し、人肌の温度35度〜38度位まで熱して火からおろす。さらにぬる燗になるまでそのままおいてゆっくり冷ます。最後によく混ぜて、 黒ジョカからチョクと呼ばれる盃に注いで飲む」これが焼酎の最もおいしい飲み方なのだとか。本格焼酎の魅力がわかりかけてきたら、 そしてもっと究めたいと思うようになったら、 ぜひ、 試してみてください。
 ここまでこだわっても、またこだわらずとも、 飲み手の心意気に応えて、 いつもベストなおいしさを見せてくれるのが本格焼酎。 自分なりの楽しみ方をみつけてみませんか。


小松宏子) 

writer's eyes
 一昔、いえ15年ほど前は、こだわりの割烹に行けば、店の主人は大吟醸の品揃えを自慢するのが常でした。それが純米酒にとって代わり、さらにワイン自慢へ移行した人も。 が、昨今では、もっぱら幻の焼酎をいかにして手に入れるかというような、焼酎自慢を多く聞きます。こだわりの店の主人のこだわる酒、これは日本におけるお酒のブームの指標です。昨今、焼酎がいかに高く評価されているかということが、 こんなところからもわかりますね。
 そして先日、お酒が大好きな友人に、焼酎のお湯割りは、絶対にお湯から先に入れたほうが酔わない、翌日の朝が全然違うという話を聞いたばかり。味としておいしいことは本文で説明した通りですが、しっかり混ざったほうが、血中への吸収もマイルドなのだろうか、 はたまた単純においしく飲んだほうが酔い醒めも爽やかということなのだろうかと興味津々。 理由をご存知の方がいらしたら教えてください。



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