2003.7.23号




 「朝起きたらまず1杯、それから常時携帯してのどの渇きを潤す、そして寝る前に1杯」など、アクティブドリンキングの勧めを何度となく耳にして、早10年以上の月日が経過。「で、どう?」と聞かれて絶句する私。なぜなら解ってはいるけど続いたためしがないのが現実。そこで新たな発見をするべく、日々、水と向き合い、時には専門家の話に耳を傾け、また時には料理人のミネラルウォーターライフについてリサーチ、といった「愛水生活」を過ごすこと約1ヵ月。そしてここに、お気に入りのブラジリアン・ソングから拝借したタイトル「ÁGUA DE BEBER〜美味しい水」と題したレポートを提出します。決して水愛飲家でもなかったレポーターの驚きと感動が伝わることを祈って、早速ご報告! 

「ÁGUA DE BEBER〜美味しい水」基礎編



  水と人体の関係は、今ここで詳しく説明することは省略させていただきますが、基礎知識として「成人の身体の約60%が水分、そして1日に約2.5リットルの水を失い、食事では補いきれない約1.5リットルの水分を補給しなければならない」ということをまず記憶しておきましょう。また俗に「美味しい水」をつくるといわれる成分は大きく3つ、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなど水に溶けている鉱物質)、硬度(=水中のカルシウムとマグネシウムの合計量 )、二酸化炭素(水に十分に溶けている)のバランスが良いものです。そして、美味しいと感じる水はやはり故郷の水、だから軟水の国・日本に生まれた日本人は軟水の方が違和感なく口にすることができるというわけです。


  ところで、ひと口にミネラルウォーターといっても、日本とヨーロッパのミネラルウォーターの基準に違いがあることをご存知でしたか?その違いを簡潔にご紹介しましょう。

 
殺菌(除菌)処理をしなければならない(日本は採水地の環境に対する規制がないため、殺菌しなければ安全といえない)。ただし、汚染の心配のない水は義務付けられていない。
アメリカも日本同様、軟水で原水の殺菌が前提。
(いずれも農林水産省発表のガイドラインによる日本の基準による分類)
ナチュラルミネラルウォーター
ナチュラルウォーター ・ ミネラルウォーター
ボトルドウォーター(昨今話題の海洋深層水はこれに属す)
 

 
自然の水で、人体に有害な細菌を含まない水でなければならない。
全ての汚染から守るために、採水地周辺の環境保護を実施しなければならない。
一切の殺菌、除菌を行ってはならない。
(世界標準となっているCODEX(食品の国際基準)はこのEU統一基準を基に決められ、いずれもナチュラルミネラルウォーターに分類)
ナチュラルウォーター ・ ミネラルウォーター
ボトルドウォーター(昨今話題の海洋深層水はこれに属す)
 

ヨーロッパのミネラルウォーターのボトルデザインには、しばしば緑と青が用いられていますが、その理由を専門家にたずねてみたところ;
「単にイメージの問題で、緑は健康的、また青は爽やか、といったところでしょうか。」ご参考までに。

「ÁGUA DE BEBER〜美味しい水」応用編


  美味しい水は飲むだけでなく、調理にも応用するとひと味違うことは最近では多くの人が体験済みかもしれません。時には例外もありますが、まず基本は、和食には軟水、洋食には硬水と覚えておきましょう。 では、その詳しい用途とは?
[軟水/硬度50以下]
水戻しのだし、かつおだし、昆布だし(※1)、緑茶

※1 だしをとる際、硬度の高い水を使うとアクばかり出てしまい、肝心の素材の旨みを引き出すことができない。特に水に味が左右される蛋白質が旨みの和風だしをとる際は、硬度が低い水が向く。ただし軟水は素材の臭みも同様に出る危険があるので、煮出す時間に注意。熱を加えてだしをとる際は、加熱殺菌の水で可。常温の水でだしをとる際は、非加熱殺菌の水を使用するほうがよりおいしさを生かせる。反対に煮干しのような臭いの出やすい素材に軟水は不向き。やや硬度のある水で臭みを抑えるほうが良い。

[軟水/硬度50〜100]

紅茶(※2)、炊飯(※3)、料理全般、コーヒー、しゃぶしゃぶ、鍋物

※2 紅茶のタンニンはカルシウム、マグネシウムと結びつき白濁するので、一般的には硬水が適す。 ダージリンは硬度100までの軟水がベスト、セイロンは硬度50位の軟水が、アッサムは硬度300位の硬水が向く。
※3 まず、お米を研ぐ前に10分位ミネラルウォーターにさらすだけでもふっくらと美味しく仕上がる。またカルシウムの多い硬水は禁物。カルシウムには食物組織を硬化させる性質があり、炊き上がった米をパサパサにしてしまう。米の65%は水分なので、できれば質の良い軟水で炊くことがお薦め。

[中硬水/硬度100〜200]
洋風だし(※4:スープストック、牛すね肉など)

※4 硬いスジ肉を柔らかく煮込みたい際は、肉を硬くする硬蛋白質といわれる物質をアクとして遊離させる硬度300位の水が向く。 骨付き牛スジ肉などからだしをとる西洋風スープストックには硬度の高い水でじっくり煮込むと、余分な蛋白質やカルシウム、マグネシウムなどがアクとして抜け、良い味が出る。 一方、野菜を長時間ゆでる場合でなければ、極端に硬度の高い水以外、どんな水を使用しても大差ない。が、煮る場合は、柔らかく煮るなら軟水、煮崩れしないようにするなら硬水が向く。

[硬水/硬度200以上]

食前酒がわりに、スポーツ後のミネラル補給、妊産婦などのカルシウム補給、ダイエット、便秘解消


 調理との相性同様、食事との相性もあるのが水。 一般論としては、和食には日本の水、イタリアンにはイタリアの水、フレンチにはフランスの水など各国料理にはその国の水が合うと言われていますが、たとえば下記のような声も参考までに。

インド/カレー: 「(硬度100位の)日本の水(体内活性水)が飲みやすく感じた」
スペイン/パエリア: 「お米を使った料理のせいか、日本の軟水も合うけど、スコットランドの中硬水も好相性な気がした」
イタリア/パスタ: 「イタリアの水も良いが、(硬度100位の)イギリスの発泡水も合うと思った」

無国籍とか、創作料理といった名前の料理が普及する昨今、食と水のクロスオーバーにも新たな発見があるのでは?と思うのでした。


「ÁGUA DE BEBER〜美味しい水」村上祥子先生の調査結果

 主宰するクッキングスタジオのある東京⇔福岡を毎週往復することから「空飛ぶ料理研究家」としても知られる村上祥子先生。その定評ある手早く合理的な調理法と豊富なレシピのベースがアルカリイオン水。12年前から手がけられているという「アルカリイオンの水の調理に及ぼす有用性」についての研究をもとに、このほど「キリン アルカリイオンの水」をサンプルに、水道水、浄水との比較を披露しました。
(成分分析調査:日本食品分析センター)

鶏ガラスープ

 

うま味成分「遊離グルタミン酸」の抽出力やアクを抜き出す力に優れ、臭み・脂浮きの少ない、まろやかで、しっかりとした味のスープを取ることができる。

昆布だし
かつおだし

うま味成分「遊離グルタミン酸」の抽出力に優れ、昆布、かつおだしを手早く、香りよく、しっかりと取ることができる。
主食 「イタリアの水も良いが、(硬度100位の)イギリスの発泡水も合うと思った」
野菜調理 ごぼうやほうれん草等の野菜に含まれるアク(ごぼう「クロロゲン酸」/ほうれん草「シュウ酸」)の抽出力が高いため、エグ味の少ないまろやかな味の野菜に調理することができる。また色鮮やかな仕上がりにも満足。
緑茶、麦茶 少量の茶葉で美味しいお茶がいれられて経済的。

  かなり、凝縮した内容でのご紹介となりましたが、ぜひ、毎日の食生活と水との関係にお役立て下さい。
 最後のまとめとして「食べるということは明日の元気へつなげること」という村上祥子先生の言葉をここに贈ります。

「ÁGUA DE BEBER〜美味しい水」料理人ブデ氏の場合

  最後にご紹介するのは、4月25日にオープンして以来、話題の新しいランドマーク「六本木ヒルズ」。そのスモールタウンの一角に佇むモダンなホテル「グランド ハイアット 東京」の食部門を司る総料理長ジョセフ・ブデ氏に伺いました。彼とミネラルウォーターとの日常付き合いは、とてもユニークで参考になることでしょう。
「基本的にミネラルウォーター選びは用途によって変えています。」とのこと。
例えば・・・

『Contrex』(コントレックス) 体内を浄化したい時
『evian』(エビアン) 食事中
『WATTWILLER』(ヴァットヴィレール) エレガントなディナー
『VOSS』(当ホテルの客室でも使用※5 北ヨーロッパ料理
『S.PELLEGRINO』(サンペレグリノ) イタリアン
  カンパリ等のサマーカクテル
『HIGHLAND SPRING』(ハイランドスプリング) 爽やかな後味は会議にぴったり
『BADOIT』(バドワ⇒フランスではポピュラー/日本ではグランド ハイアット 東京 レストラン内で購入可能) 頭痛の時
         
「日本のミネラルウォーターは、ペットボトルのバリエーションが豊富で携帯に便利なのでアウトドアで活躍しています。」

※5 VOSS
ノルウェーのミネラルウォーター。飲み心地も爽やかで、日本人にも好まれるタイプの味わい。「グランド ハイアット 東京」の客室用にも選ばれた理由は、味わいはもちろんのこと、シンプルでスタイリッシュなボトルデザインが部屋のインテリアと違和感がなかったからだそう。

 というわけで「グランド ハイアット 東京」の10のレストランやバーでは、それぞれの料理の土地柄やタイプに合ったミネラルウォーターが用意されています。和には和+α、伊には伊+α…といった感じに。

Josef Budde
1950年ドイツ出身。ドイツ、イギリス、フランス、アメリカ各地の一流レストラン&ホテルを経て、1983年グランド ハイアット シンガポール総料理長に就任。以降20年に渡りハイアット インターナショナル グループのホテルで総料理長を歴任。1989年よりグランド ハイアット 香港の総料理長兼飲料担当副総支配人を勤め、この頃より日本のグルメたちにもその名を知られるようになる。2000年には名誉ある「Kosher Chef of the Year by Chabad Hong Kong」を受賞。2002年、開業に先立ちグランド ハイアット 東京の総料理長として来日。同ホテルの10のレストラン&バーにおいてその手腕を振るっている。


「ÁGUA DE BEBER〜美味しい水」に乾杯!

 スーパーマーケットやデパートの食品売り場へ行くと全国各地の、また世界各国の多種多様なミネラルウォーターが並んでいるので、「はてどれにしよう?」と悩んでしまう人も多いのでは?思い返すこと数年前、パリの有名セレクトショップ「コレット」の地下にオープンした「COLETTE WATER BAR」でも、どのミネラルウォーターを飲もうか迷った憶えが。そして最近では日本でもバリエーション豊富に水を扱ったレストランやバーが登場。同様に自宅やオフィスでの水との付き合い方も飲むだけなく、用途に合わせて軟水か硬水を選ぶなどの変化を遂げました。なぜ人はそこまで水にこだわりだしたか?きっと、各自何か「違い」を体感したからでしょう。私達の生命のサポーター、水との付き合いにはまだまだ発見があるはず。まずは2003年夏のご報告でした。

参考資料&Special thanks to
ミネラルウォーターBOOK(新星出版社)
ボルヴィックhttp://www.volvic.co.jp
キリンMCダノンウォーターズ(株)& 村上祥子先生
グランド ハイアット 東京 (http://www.grandhyatttokyo.com

(りんだ) 

writer's eyes
 およそ1ヵ月、まさにアクティブドリンキングな日々を過ごし、身体の内と外の変化を実感!多種多様な水を口にしつつ、私好みのタイプや、食事との相性、また調理との相性も見つけられたように思います。 水とはいえ嗜好品、だからみんな同じじゃないから面白い。「何冊もの本を読むより、まずは体験あるのみ」という、りんだ的発想法にマッチした水との新たな出会いでした。
みなさま良い夏を!



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