2003.9.10号




 「ワタシ、最近夏ばてなの・・・フウゥ。」
この時期になるとまるで挨拶のようにあちこちでこう嘆く人が多いのではないでしょうか。
 そもそも「夏ばて」は、夏期に食欲がなくなり、身体がだるく、何もする気がおこらないといった状態を指す一般的な言葉で、厳密には医学用語ではありません。 血液や尿の検査をしても正常範囲で、「病気」とまではいえないものを指すことが多いのです。しかし、場合によっては頭痛やめまい、発熱など、日常生活にさらに支障をきたす状態になったり、熱中症、日射病など夏特有の病気を引き起こしやすくなったりと、健康をおびやかす恐れがあります。 朝晩は比較的涼しく、日中はまだまだ暑い9月こそ、どっとそれまでの疲れが出やすくなるので注意が必要です。  

猛暑の疲れがどっと出る、9月は『夏ばて注意月間』

 夏ばては、高温多湿やそれに伴う水分の摂取量過多により、身体の調節機能が環境に追いつかないことが主な原因で起こります。

(+_+) 血液循環のバランスの乱れによる食欲不振
人間は、脳内の視床下部にある体温調整中枢によって、暑さや寒さに対応できるようになっています。 気温が上昇すると、この中枢が働き皮膚への血流量を増やし、皮膚温を上げて体内の水分を蒸発させようとします。これが汗をかく仕組みです。
ところが、皮膚に血流が集中する分、胃腸への血流量は対照的に減少してしまいます。それにより胃腸の働きが低下し、胃液の分泌も減少し、消化する力が弱くなるために食欲もなくなってしまうのです。
いわゆる「暑くて食欲がなくなり、元気が出ない」という状態はこのようなメカニズムで起こるのです。

(+_+) 水分の摂り過ぎによる消化機能の低下
暑さのあまり水分を過剰に摂取した結果、必要な栄養素を補給できず疲れやすくなり、また、水分の摂り過ぎによって胃腸の働きが低下することで食欲がなくなります。
暑い日が続くと、ついつい冷たい清涼飲料水に手が伸びるもの。汗をたくさんかくため水分補給は大切なのですが、摂り過ぎは逆効果。 胃酸を水分で薄めてしまい、食べたものが上手く消化されず、十分な栄養が補給できなくなってしまうのです。 また、ジュースやアイスクリームでお腹がふくらんだ後は食事量そのものも減ってしまいがち。 そのため、疲れやすくなりばててしまう・・・ということになりやすいのです。

(+_+) 冷房のあたりすぎによる身体の冷えや自律神経系の乱れ
冷房の効いた部屋に長時間いると、身体が冷えることで筋肉が硬直した状態(いわゆる「凝り」)を引き起こしやすくなります。 また、温度変化に対応するための自律神経が乱れがちになり、少しの暑さでもまいってしまうなどの体温調節機能の低下や、頭痛などの自律神経失調症の症状を引き起こす場合も。
ちなみに、人間が急激な温度に対応できるのは5℃以内だといわれ、それ以上の温度変化が度重なると温度変化に対応しきれなくなるといわれています。   

(+_+) 熱帯夜が続くことによる睡眠不足
暑さによって慢性的な睡眠不足になると、日中の疲労がとれにくくなります。睡眠に適した気温は、夏は約25度、湿度は約50%と言われています。ただし、だからといってクーラーを効かせたままにしていると、やはり体温調節機能の低下を招く恐れがあるので注意が必要です。

 9月はそれまで長く続いた過酷な暑さで疲れがピークに達し、加えて厳しい残暑や秋に向けての気温の変化などでますます身体の調整機能が損なわれやすい、『夏ばて注意月間』といえるでしょう。

「適度な運動」で、夏ばてを上手にフェードアウト

 夏ばて対策には、ビタミンやミネラルの摂取、十分な水分補給、そして睡眠が挙げられますが、さらに適度な運動をすることでより早くスッキリと夏の疲れをとることができるということは、あまり知られていないかも知れません。「まだまだ暑い最中に運動なんて・・・」「余計に疲れやすくなるのでは?」と敬遠する人も多いでしょう。
確かに炎天下でのハードな運動は疲れを増長させる恐れがあるので逆効果。 でも夏の間クーラーの効いた中で過ごした身体はだらんとなまっていて、何をするにもエンジンがかかりにくくなっていませんか? これではいざ涼しくなってきても、いつまでも倦怠感、疲労感を残すことに。夏ばて解消には身体の中でエネルギーを燃やし、活動力をつけることが大切なのです。



(^_^)Y 血糖値の低下で食欲増進
夏ばてでまいっている身体のほとんどは、食欲不振で栄養バランスが悪く、清涼飲料水やアイスクリーム、果物を好んで食べるため糖分は多めという状態。 つまり、血糖値も高めといえます。運動時には血液中の糖分が優先的にエネルギーとして使われやすいため、血糖値を下げるのに効果的。 さらに、血糖値は脳の摂食中枢と呼ばれる食欲をつかさどる部分との関係が深く、血糖値が下がることでこの中枢が働き、空腹感を覚えるようになります。 その結果、食欲が増して体力をつけるのに必要な栄養の摂取が可能になるのです。

(^_^)Y 自律神経機能の調整
自律神経には、主に活動に関係する交感神経と、主に休息に関係する副交感神経があり、この2つがバランスをとることで、人間の心身は活動と休息を上手に繰り返し、疲れを残さない仕組みになっています。ところが、猛暑や熱帯夜が続くとこのうちの副交感神経が上手く機能せず、自律神経のバランスが崩れてイライラや不眠、疲労感の原因に。
これを解決するにはやはり運動が大切。運動中は交感神経が主に活発になっていますが、運動終了とともに、身体の自然な反応で、副交感神経の活動が自然に高まり、バランスをとろうとするのです。

(^_^)Y 質の高い睡眠をサポート
睡眠は体温の上下と深い関係があります。 体温は、通常昼間の活動時には高く、夜間の休息時には低くなりますが、この上下の幅が大きいほど、ぐっすりと深い眠りを得ることができるのです。 ところが、夏の間は昼も夜も気温が高いため体温の上下幅は少なく、昼間クーラーの効いた部屋で過ごしたとしても、かえって夜の方が気温が高く寝苦しい、という悪循環に。 夜しっかりと眠るためには、昼間体温を上げて夜クールダウンさせる、というリズムが大切なのです。
体温を上げるには日中身体を動かすことが一番。積極的に身体を動かすことで体温を上げておけば、夜になると下がり熟睡感が得られやすくなります。また、よく身体を動かすことで、適度な疲労感が得られ、眠りにつきやすくなるのです。 その結果、たとえ短時間だとしても「質の高い睡眠」となり、夏ばて解消に効果的というわけです。

サウナスーツ、水分ガマンは逆効果!?
                 夏に運動をするときのポイントは?

 「適度な運動が夏ばて解消に良いということはわかったけれど、<適度>って一体どのくらい?」「汗をたくさんかくのがイヤだから水分は控えめにしたいんだけど・・・。」そう、ひと口に運動といっても過酷な気候の中で上手く生活に取り入れるにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。
先日某有名芸能人が、過激なダイエットに取り組み水分をとらずにステージをこなした結果、それが引き金となり入院した、というのは記憶に新しいところ。 正しい認識を持って身体の機能を高め、夏ばてをふりはらいましょう!



早朝or夕方を運動タイムに
気温の上昇が著しい日中は避けましょう。また、眠る2時間前に軽い運動をして体温を上げると、その後体温が下がりやすくなり、眠りにつきやすくなります。

ウエアは吸湿性、通気性にすぐれたものを
ただでさえ湿度の高い季節。皮膚呼吸や体温調節を助けるウエア選びは大切です。 昨今のスポーツウエアは、吸湿性や通気性に富んだ新素材を採用しているので、本格的なスポーツ選手でなくても、ウエアはスポーツ用のものを着用すると快適に運動を続けることができます。
紫外線対策のため、帽子も忘れずに。

充分な水分補給を心がける
のどが渇いてから一度にたくさんの水分を摂ると、胃腸に負担がかかりやすくなります。
のどが渇く前にこまめに補給することが疲労を予防するコツ。
甘いジュースの飲み過ぎに注意!



 基本的に、残暑の中での運動の注意事項を守ればどのような運動でもOKといえますが、夏ばてでストレスがかかっている身体には、キツイ運動はかえってストレスを増大させることになるので避けた方が無難。短時間に力を出す瞬発系のスポーツよりも、マイペースでできる持久系の運動の方が適しているといえるでしょう。例えば・・・

(^-^) ニコニコペースのウォーキング
朝晩の涼しい時間帯に、30分間、週3回程度続けられるとベストです。
このとき、心拍数が100拍〜130拍/分を目安にするとより効果的です。
背すじを伸ばして前方をまっすぐ見ながら、腕をしっかり振って足はかかとから、を意識すると、ばくぜんと歩くよりもずっと心拍数も上がり、運動の強度も上がります。
無理なく運動「ニコニコペース」の目安

(^-^) のんびりスイミング
長時間ゆっくり泳ぐことは全身運動になり、心肺機能を高めるのにも効果的。 ただし、30〜40分泳いで10分休憩、というように、体力や体調に合わせて休憩を入れましょう。疲れすぎや水による冷えすぎを防ぎます。

(^-^) らくらくインドアスポーツ
冷房の効いたトレーニング施設等での運動は、身体を冷やさないようにすることが大切です。 運動中はTシャツ,短パンでOKですが,運動前後,特に運動後に冷房によって身体が冷えすぎてしまうと夏風邪の元になるので気をつけましょう。 これを守れば、朝晩運動する時間がとれない人にはむしろ、インドアでの運動の方が効果的といえるでしょう。 運動の種類にもよりますが、20〜30分ごとに短いインターバルをおくと良いでしょう。

■取材協力/ パーソナルトレーナー/ 野口 克彦さん
 
平成13年、筑波大学大学院修士課程体育研究科(スポーツ健康科学専攻)修了。 中学陸上部から市民ランナーまで幅広くスポーツコンディショニング指導を行なうかたわら、 肩こり、腰痛、関節痛等の予防・改善を目的とする運動指導を中心にパーソナルトレーナーとして活動中。
著書に『タオル de ストレッチ』『椅子 de スト レッチ』(ともに主婦の友社)がある。
参照サイト:athlete-web.com

渡邉真由美) 

writer's eyes
 今年も仕事の合間をぬって、8月に短い夏休みをとり、志賀高原に行ってきました。普段オフィスや電車内のきつーい冷房で体調を崩すワタシにとって、自然いっぱいの高原の涼しさはまさに癒し。やはり人工的につくりあげられた「快適さ」とは違う、生きた「恵み」があるからなのでしょう。おかげさまで身体の声に素直に耳をかたむけられる小旅行になりました。



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