スローフード、スローライフなど、“スロー”という言葉がすっかりブームとして定着しています。もちろん、感覚的にはわかっていても、正確な意味となると・・・。まずは、本来の“スローフード”の成り立ちを紐解きましょう。
日本で初めて公にスローフードという言葉が取り上げられたのは、おそらく5年ほど前のキューピーマヨネーズのTVコマーシャルではなかったかでしょうか。美しい映像とともに、とても魅力的に感じたのを覚えています。
その後じわじわと浸透し、この2〜3年で一般名詞としても市民権を得たようです。

スローとはファストの反対、つまり、ファストフードの反意語ということなのでしょうか。それもあります。でも、この言葉にはもっと広く、深い意味が内包されているのです。
発端は18年ほど前、イタリアのローマに某ファストフードレストランの1号店が誕生し、マスコミで批判されていた頃にさかのぼります。のちにスローフード協会の会長となるカルロ・ぺトリーニ氏が仲間と食卓を囲んでいたとき、ファストフードの脅威が話題となり、だれからともなく“スローフード”という言葉が叫ばれたとか。その後1986年に、ペトリーニ氏は、故郷、北イタリア、ピエモンテ州のブラという小さな村に「スローフード協会」を発足させることになり、スローフード運動に身を投じ始めました。掲げた理念は、消えつつある郷土料理や質のよい食品の生産者を守ること。そして同時に、正しい食のあり方を守るために健全な味覚を育てることです。
具体的には各地を足で回り、農家や小規模生産者を支援するとともに、機関紙を発刊することで運動の輪を広げていきました。スローフード協会は、基本的には非営利団体ですから、会員が払う会費や、出版物の売り上げ、寄付などで運営されています。協会のシンボルマークは、まさにスローを地で行く、可愛らしいかたつむり。
会員のバッジや、出版物などさまざまなところに効果的にあしらわれています。
発足当初、7,000人だった会員は、イタリア国内だけでなく、急速に海外へも広まっていきました。フランス、ドイツ、アメリカなどの欧米諸国をはじめ、北欧や東欧諸国、南米、また韓国や日本などのアジアにまで広がり、現在では世界50ヵ国、6万5千人の会員を持つ、一大組織となっています。

また、実際の活動を担うひとつひとつの支部のことを「コンビビウム」といい、それぞれに会員を募り、個性豊かな活動を続けています。この名は、ラテン語の「共に生きる」という言葉からきています。これにはまた「共に食べる」、という意味もあります。コンビビウムの主な活動のひとつが、皆で試食、会食するといのもそのためです。個食ではなく、皆で一緒に食べることの自然さ、大切さを説いているのです。
現在は、イタリア国内だけでも340ものコンビビウムが活動。日本には1996年に第一号が名古屋に発足しました。以来、現在まで15の支部が登録されています。日本にいながらスローフード協会の会員になるには、近隣のコンビビウムに申し込むのがいちばん簡単ですが、イタリアの本部に直接申し込むという方法もあります。
以上が組織としてのスローフードの説明ですが、一般にスローフードが提唱されるときには、「忙しさにまぎれておろそかにしている食生活を、この辺でじっくり見つめ直そう」という意味で用いられることが多いでしょう。食事のあり方や、食材を考えることで、ひいては農業へ目を向け、地球規模での環境問題までをも、目を広げていこうというものです。