2004.4.14号




 ♪夏も近づく八十八夜〜♪ 茶摘みの唄に出てくる「八十八夜」とは、立春から数えて八十八番目にあたる日、つまり五月二日ごろをさします。そう、もうすぐ新茶の季節。にごりのない緑色にほのかな苦味と爽やかな後味は和の風情を楽しめるだけでなく、健康・美容に良い成分もたっぷり。今回は緑茶の中でも、八十八夜に摘まれる一番茶からできる抹茶に注目。カラダとココロに効く「ヒーリングパワー」を探ります。 イメージ


抹茶とは

煎茶と抹茶の違いは、その製造方法にあります。煎茶は摘んだ茶葉を蒸した後、熱を加えながら揉んで風味を出します。茶葉も細く尖ったおなじみの形になります。抹茶にする茶葉は、まずお茶の木をよしずなどで覆い、太陽の光を遮断します。これはお茶の甘み成分「テアニン」が光で酸化し渋味成分の「カテキン」に変わるのを抑えるため。その後フレッシュな新芽を摘み、じっくり蒸して、茎や葉脈を取り除き、柔らかい葉肉だけを細かく挽きます。抹茶ならではの繊細で深い味わいはこうしてできるのです。
なお、一見間違えそうなものに「粉茶」がありますが、こちらは緑茶を作る過程でできた粉を集めたもので、抹茶とは別のものです。


「養生延命の薬」として広まった抹茶

抹茶の歴史は鎌倉時代、禅宗の僧侶栄西が、宋の国から種を持ち帰ったことが始まりといわれています。栄西は宋での4年間の生活で、茶に養生延命の効力を認め、また飲むと頭が冴えることから禅の修行に欠かせないとして伝法とともに茶の効用を広めていったのです。後に栄西は『喫茶養生記』(1211年)という書物の中で、お茶のことを「養生の仙薬なり。延命の妙薬なり。」と記しています。
このころの飲み方は、茶を粉にしてお湯の中にまぜるというもので、今の抹茶の原型ともいえるでしょう。やがてお茶は武家屋敷でもてはやされるようになり、南北朝時代には広く一般にも普及し、室町時代には茶道の発展とともに、日本独自の文化として抹茶をたしなむ習慣が完成していったのです。


ココロに、カラダに優しくしみわたる抹茶の効用とは?

遠く鎌倉時代から伝わってきた抹茶の健康効果。近年ではさまざまな研究により、主だったものでも以下のような効用が認識されています。


「お茶を飲むとほっとする」コーヒーや紅茶とはまた違って、ココロが一息つくような感じがお茶にはあります。この正体は「テアニン」という物質。お茶の旨み成分を構成するアミノ酸の一種で、同じアミノ酸であるグルタミン酸を誘導する物質です。血圧を下げたり、脳や神経機能に作用してα波(リラックスしているときに出る脳波)の出現を顕著にさせたりという働きがあるといわれています。
テアニンはお茶の木の根部分で作られてから葉に移動しますが、日光に当たると渋み成分のカテキンに変化していきます。つまり、お茶の中でも、日光をさえぎって育てた茶葉にテアニンは多く含まれているというわけ。抹茶を作る場合には、お茶の木をよしずなどで覆い、太陽の光を遮断します。これにより渋味を抑えて旨みを引き出すとともに、成分の面でも「リラックスの素」テアニンの含有量が高くなるのです。


今や美容業界でもすっかりおなじみになった言葉「抗酸化」。私たちが生きていくためには酸素が必要不可欠ですが、呼吸によりわずかながら有害な活性酸素と呼ばれる物質ができ、細胞を傷つけてしまいます。肌荒れ、老化、そしてガンも活性酸素が関与しているといわれています。その害から逃れるためには、常に抗酸化物質を取り入れて活性酸素を除去する必要があると言えるでしょう。よく知られているものにはビタミンCがありますが、抹茶はこのビタミンCが豊富。また、緑茶飲料で大々的に取り上げられ話題となったカテキンも豊富です。

   
  ビタミンC
いわずと知れた「美白・美肌のビタミン」ビタミンCが抹茶には豊富。ほうれん草の約3倍含まれているそう。カテキンの働きで熱による破壊がほとんどなく体内に吸収されます。一煎目にほとんどビタミンCが出てしまうので、淹れたてをおいしくいただきましょう。なお、抹茶100g中のビタミンCの量は60mg、抹茶を点(た)てるときの量を3g(薄茶1.5〜2g、濃茶3〜4g)として、約1.8mg
摂取することができます。
(成人の1日当たりの必要量の目安は50mg)
 
     

   
  カテキン
お茶独特の渋味を構成している成分がカテキン。植物から摂れるカテキンにはほかにリンゴやカキなどの果実由来のカテキンとおもに樹皮からとれるポリフェノール類がありますが、茶カテキンは今のところ唯一、その分子構造が明らかになっているため、健康への作用など抗酸化の研究が進んでいるといわれています。また、同じお茶でも紅茶は茶葉を発酵させる過程でカテキン類が他の物質に変化するため含有量が少ないのに対し、緑茶の場合は発酵しないよう加熱処理してから乾燥させているのでカテキンの量が豊富なまま。お茶どころ静岡県の胃がん死亡率は全国平均の5分の1という報告も!美肌・健康ともに心強い味方といえるでしょう。
 
     



ミネラルは血液のアルカリ性を保ち、新陳代謝を円滑に行うために必要な栄養素。抹茶には、茶葉に含まれるカリウム、亜鉛、ナトリウムなどのミネラル分がほぼ損なわれることなく含まれています。特にこれからの季節、汗をかくと体内から水分とともにミネラル分も排出されてしまうので、抹茶はこれらの補給にぴったり。
また、抹茶に含まれるミネラルの一つ、フッ素は虫歯の原因である菌の発育を抑える働きや殺菌作用があるので、虫歯菌の繁殖を予防できます。同時に、口の中に残った食べ物のカスが腐敗することによって起こる口臭も防ぐことができるのです。昔は地域によって、食物などを入れる缶や箱の臭いをとるためにお茶の葉をほんの少し入れる習慣がありましたが、これも茶葉自体が持つ消臭効果を活用した生活の知恵なのです。

もっと手軽に抹茶のヒーリングパワーを取り入れよう

抹茶を点(た)てることは、習い事や趣味の域と思われがちですが、最近では家庭で気軽に御点前(おてまえ)を楽しむ人が増えてきました。
抹茶を点てるには「茶器」「茶さじ」「茶せん」の3つが必要ですが、茶器の代わりに深めの食器、茶さじの代わりにティースプーンでもOK。とはいえ、茶せんは必需品。2000円程度で入手できます。
さて、そこで実践!
抹茶の点て方には薄茶と濃茶がありますが
一般的には薄茶の方がいただきやすいでしょう。

薄茶の点て方
1. 茶器は温め、水分を拭っておきます。
2. 茶器に抹茶を2g(ティースプーン1杯程度)入れます。
抹茶をあらかじめ、茶漉しなどでこしておくと、だまになりづらく、喉越しがいいでしょう。
3. ぬるめのお湯100cc(器の1/4程度)を静かに注ぎ、茶せんで手早く混ぜます。(熱湯ですと、抹茶の香りを損ないますのでご注意!)
4. 表面に細かな泡がたてば、大成功!

それでもちょっと家で点てるのは面倒、という方は、料理やお菓子に抹茶をプラスしてみてはいかがでしょう。抹茶入りのパウンドケーキ、温めた牛乳に抹茶と砂糖を加えた「抹茶オーレ」、天ぷらの衣に抹茶を混ぜるetc.レシピというほどでもない簡単プラスで、健康・美容だけでなく目にも美しい春のメニューができあがります。
渡邉真由美) 

writer's eyes
お茶の起源は、なんと紀元前2000年の中国までさかのぼるそう。昔の中国でも、お茶の葉を細かくして湯で溶いて飲んでいたそうなので、抹茶というのはまさに「お茶の基本」だったのだなあと感心。今まで「抹茶」といえば「・・・アイス?」位しか思いつかなかった侘びも寂びもないワタシ。今度お茶を点ててみようかなと思ったのでした。トレーナーにジーパン姿だけど、許してね。



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