2004.5.12号




第一回目は、きれいねネット・コラム「興味心身〜きょうみしんしん〜」でおなじみの女医・おおたわ史絵さん。内科医師として、タレントとして、コラムニストとして、いくつもの顔を精力的にこなす、おおたわさんが考える“美しさ”とは?


誰かの記憶に残る人こそが、“美しい”


世の中、いろんなタイプの美しい人がいると思うんですよ。たとえば、東京の青山あたりを歩いていると、大抵の人はきれいでしょう? みんな自分に似合うものがよくわかっているし、メイクもとてもお上手ですよね。
ただ、「お洒落な人=美しい人」ではありません。たまたま持って生まれた顔立ちが恵まれているとか、とくに美容に気を配っているとか、確かにそれもまた美しさのひとつですが、私、個人的には、美しい人とは“記憶に残る人”じゃないかと思ってるんです。
ハッと驚くほど美しい顔立ちや、流れるような物腰、手の表情、歩いている後ろ姿などが記憶に残ることってありますよね。もちろん視覚的なことばかりではありません。その人の持つ香り、香水ではなく、その人がもともと持っている匂いというのも、美しさのひとつの要素になると思います。
それがもっと目に見えないものになると、フェロモンという言い方をしますよね。理由はわからないけれど、なぜか人を惹きつける人というのは、目に見えない匂いや空気感みたいなものをもっているという点で、第三者の記憶に残るのでしょう。


まずは、もって生まれた「個性」を受け入れることから

そうなると、「個性的な人=美しい人」と思われるかもしれませんが、ちょっとニュアンスが違います。というのも、「個性」というのは、持って生まれた“決定的な何か”のことなんですね。たとえば、背が高いとか、指が長いとか、目が大きいとか、そういう良い要素ばかりではなくて、体毛が濃いとか、口が大きいとか、ネガティブな要素もひっくるめて、“持って生まれてしまった、どうしようもないもの”のことを「個性」というんです。ところが、今、「個性」や「自分らしさ」を履き違えている人がとても多いですね。自分らしくあろうとして習い事をするとか、メイクを研究したりする人などがそうです。個性的であるには、本来、「持って生まれた他人との違いを、いかに掘り下げて考えるか」という作業がとても重要なんです。たとえば「背が低い」というネガティブな「個性」を、いかに転じてプラスにしていくかというところを、勝負の決め所にしなくては。
それには、まずじっくり自分を見つめなければならないし、見つめたときにぶつかる嫌な「個性」とも向き合わなくちゃならない。でもそれを認めて、最後には好きになって自分の良さに転じる強さが必要なんですね。つまり、個性的であるためには、ものすごく努力しなければならないんです。
ところが、今、時代やブームといったものに安易に踊らされる人が、いかに多いことか! もともと“ミッドラインの感覚”を持った人でも、周りの仲良し友だち4人のうち3人が流行に左右されていたら、自分もそうしてしまう可能性は非常に高いといえます。
ここでいう“ミッドライン”とは、“普遍的な美しさ”のことでもあるんです。左右に揺られながら生きたほうが、一見個性的にも思えてしまうわけですから、“ミッドライン”をキープするには、自分の「個性」を知っている人や、自分に自信がある人でないと厳しいでしょうね。そういう意味でも、自分の「個性」に気付くのは、非常に難しいといえます。もしかすると、25、6歳でも気付かないんじゃないかしら。


実は私も、美容整形したいひとりだった

今、「30歳成人説」が唱えられたりしていますが、私自身は、その頃になるまでになんとなく自分を好きになっていれば、その人の人生は成功じゃないのかなって思うんです。それなのに、今の自分が嫌で、顔も嫌で、体型も嫌で、自分のキャリアも嫌で、せめていじれるところからいじろうと、美容整形や脂肪吸引を繰り返したりする大人がいますよね。私はそういう人は、基本的に好きではありません。だって、自分の人生に自分で責任をとっていないことになるでしょう?
ただし、15、6歳のときに「自分の顔を変えたい」と思うことは、実はとても正常なこと。けれど、そこで早まってメスを入れてしまわないほうがいい。ひょっとしたら、30代になったとき、手を入れなかった自分の顔を好きになるかもしれないでしょう? 
実は私自身、中学を卒業するときに美容整形をしたくて、Tクリニックに電話をしたことがあるんですよ(笑)。卒業の機会に今しかないと思って。まだ携帯電話がなかったんで、親に見つからないように家の電話から「整形したいんですけど」って。
当時は自分の顔のすべてが嫌だったんですが、さすがに首から上を取り替えるわけにはいかないくらいのことはわかっていたので、骨を削って輪郭を変えたいと、告げたんです。すると受付の女の人が、「そういった具体的なお話は先生とのカウンセリングの上で進めていきますから、いずれにしても一度いらしてください」と。
私としてはワラにもすがる思いだったんですけれど、「まずは診察を」と言われて急に敷居が高くなってしまい、結局、クリニックには行きませんでした。でも、それから6〜7年くらいはずっと「顔を直したい」と思っていましたよ。そういうときは、たとえ誰かが「なぜ? そんなに可愛らしい目をしているじゃない」「そんなに可愛らしい鼻じゃない」と言ってくれたとしても、全然効果がないんですよね。これが万一親からの慰めであろうものなら、余計ダメ(笑)。


顔とは、自分でつくり変えていくもの!

私自身、そういう経験があるからこそ、今、美容整形したいと思っている人や、プチ整形を繰り返しちゃう人のキモチ、すごくよくわかるんです。ただ、それは若い頃の一過性の出来事であってほしいと思うし、誰もがかかる麻疹のような欲求だと思いたいですね。大人になってもいつまでも自分の顔が嫌で受け入れられないと思い続けているとしたら、不幸な人生ですよね。
なぜなら、顔なんて、生き方によっていくらでも変わるもの。どんな恋愛したか、どんな仕事に就いたか、どんな結婚をしたか、どんな経済レベルにあるかで、シワの寄りかたから表情から、顔色から、すべて変わってしまうんですから。もちろん、最初は誰もが親からもらった顔をしていると思うんですが、ある程度の年齢を過ぎたら、顔は自分でつくり変えていくもの。これは体型を含めて、すべてにいえることです。
それらを受け入れられなくて自分を嫌いだと思うことは、自分の人生そのものが嫌だと言っているのと同じ。自分の人生そのものを全否定しているようなものですから、自分がやってきたことに対して責任を取っていないことになります。そういう大人は、どんなに美人でも、美しいとはいえません。ですから、自分の子どもに美容整形を勧める親というにも、私は賛同しかねますね。それよりも、いかに子どもが自分の顔や自分自身を好きになるかということに、全精力を注ぐべきでしょう。
誰だって年を取ると、太ってたるんでくるじゃないですか。そうなったとき「脂肪吸引すればいいわ」って思っている人って多いと思うんですが、そうするくらいなら、1日50回の腹筋運動を3ヵ月続けてみればいいんです。本当に変わりますよ。それをやらずになぜ安易に脂肪吸引なんでしょう。私自身は今、1日90回腹筋運動しているんですよ。


五感を高めることが、“美しさ”への第一歩

今、あまりにも情報過多になっているせいか、みんな五感のバランスが崩れてしまっているように感じます。特に現代人がダメになっているのが、嗅覚。
たとえば、汚ギャルと呼ばれる女の子たちが、お風呂に何日も入らないのもそう。周りの人は臭いと感じているのに、それを平気でいられるのは、どう考えても嗅覚がやられているとしか思えません。そういう子たちに限って、「鼻呼吸」ではなく、口をぽかんと開ける「口呼吸」をしていたりするから、やはり嗅覚がやられているんだなと思うんです。
嗅覚が鈍くなると、味覚も鈍ります。「今、○○が食べたい」と感じないで「とりあえず牛丼食べとく?」とか「とりあえずマック行っとく?」というようなとりあえずお腹に入れるという人が多いのも、味覚がおかしくなっているんでしょうね。空腹感を満たすためだけにご飯を食べる人が増えている気がします。つまり、ご飯がエサのようになっているんですね。
けれど、本当に自分にとって必要だと思うものは、自分の身体が答えを出していることが多いんです。「今日はすごく青い野菜が食べたい」というときは、緑黄色野菜に含まれるカロチンやビタミンAなどが身体に不足しているときだったりとか、「甘いものがほしい」というときは、身体が疲れていたり、たとえ身体は元気でも脳が疲れていたりするわけです。
ですから、化粧水ひとつ選ぶときも、売れているから買うとか、誰かがいいと言ったから買うのではなく、あれよりもこっちの香りが好き、など、身体の声を基準に選ぶといいと思います。
本当に“美しい人”や“美しいもの”というのは、見た目にせよ、匂いにせよ、ふるまいにせよ、声色にせよ、必ず第三者の心に残ります。そうなるには、情報に惑わされず、いつも「自分」という存在の声に耳を傾け、五感を研ぎ澄ますことを、忘れないでほしいって思うんです。

小倉若葉) 

writer's eyes
忙しいスケジュールを縫って、腹筋は毎日90回、週に3回はジャズダンスに通われていると聞き、そのパワフルさに脱帽。また、大好きなチョコレートは欠かさないけれど、野菜もたくさん食べる、風邪の引き始めは発汗作用のあるカレーが無性に食べたくなるなど、日々、身体の声を聞き、身体が求めるものを食べるようにしているそう。おおたわ先生の美しさの秘密、ここに見たり!



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