2005.4.13号




おしゃれが楽しくなる春、思い切ったイメージチェンジを考えている人も多いのでは?でも、正しい知識がないと、おしゃれどころかとんだ肌トラブルのもとに。今回は、そんな“キレイになりたい”オンナ心のすき間を狙う「トンデモ例」や注意点を、皮膚科の先生に伺いました。



新製品めじろおしの春は、「かぶれ」にご用心!

 年間でおよそ4000品、1日に10品もの新製品が生まれているという「コスメ大国ニッポン」、この状況に警鐘を鳴らしているのが『おしゃれ障害』の著者で知られる岡村皮フ科医院院長/岡村理栄子先生です。「モノばかりがあふれていて、正しい使い方や選び方は二の次。これでは賢い消費者は育ちません」。その結果、取り返しがつかないほどの肌トラブルを起こして先生のもとに駆け込む患者さんが後を絶たないそう。
 特に化粧品のトラブルで多いのが「かぶれ」。かぶれには一次刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎がありますが、化粧品によるかぶれは後者。これは、特定の物質にアレルギー反応を示す人だけが、その物質に触れて生じるかぶれで、何に対してかぶれるのかは人によって違います。また、同じ化粧品を使い続けていて、今までなんともなかったのに突然かぶれる、ということもあります。これは、たまたま傷がついていたり、こするなどの刺激を与えたり、身体の抵抗力が落ちていたりというような時に、皮膚からかぶれのもとになる物質が入り込み、体内のリンパ球がそれを異物と認識するからです(感作)。そして一度感作されると、2回目以降はすぐリンパ球が出てきてかぶれを起こします(惹起)。
 基礎化粧品の場合、顔全体が赤くはれるので、どの成分にかぶれるのかを特定するのはかなり困難です。


化粧品を買う前に必ずサンプルをもらい、ユージングテスト(お風呂上りに、腕の内側に塗ってかぶれないかどうかを見る)を行うこと


一度すべてのスキンケアをやめて、皮膚科の治療を受けることが基本です。



右上の図
(正常な皮膚)
皮膚の一番外側(表皮)はいくつかの層に分かれており、それぞれの層の細胞は同じ大きさで整然と並んでいる
右下の図
(かぶれた時の皮膚)
整然とならんでいた表皮細胞の間に隙間ができてスポンジのようになり、そこに細胞から出た滲出液がたまって水疱を作る。その中にはたんぱく分解酵素や炎症を起こす物質が含まれており、血管を広げたり神経を刺激したりするので赤みやかゆみが起こる
(イラスト提供:国立国際医療センター 皮膚科医長 玉木 毅先生)

トンデモ事件簿その1/あの女優さんの影響で・・・?
「テレビを見たが、自分も掌蹠膿胞症(しょうせきのうほうしょう)ではないか」今、岡村皮フ科にはこんな相談が急増中。“関節が痛い”という情報が先走りし、神経痛や五十肩の人も不安になって来院するそう。掌蹠膿胞症もアレルギーの一種で、掌や足の裏に水泡ができるというのが主な症状です。原因はさまざまですが、その一つに歯にかぶせた金属や、体内に埋め込んだ金属などが長い年月の間に少しずつ溶け出し、ある時点で急激なアレルギー症状が出る、ということが挙げられます。治療のためやむを得ず、という場合はともかく、おしゃれ目的で医師を通さずに皮膚や体内に異物を入れると、こうしたリスクと隣り合わせになることもあるということを知っておきましょう。


やっかいな「ヘアカラー」によるかぶれ

 岡村皮フ科医院の調査によると、16歳〜20歳までの男女の約半数が髪の色を変えているそう。もはや年齢にあまり関係なく、ヘアカラーは日常のおしゃれとして定着してきた節があります。
 しかし、ヘアカラーの主な成分であるパラフェニレンジアミンはかぶれやすく、その一方で顔や身体と違って見にくい部分なので気づくのが遅くなりがちです。肌と同様、頭皮もかぶれると赤くなってかゆみが出るほか、じくじくして毛が抜けることもあります。放っておくと、かぶれの範囲はどんどん広くなり、ひどくなるとヘアカラーなのに顔や胸元まで真っ赤!ということも。このようなかぶれを防ぐには、まず頭皮に傷などがないかを確かめること、そして生理や妊娠時にはヘアカラーを避けることです。それでも、ヘアカラーの場合は100回同じものを使っていたのに101回目でかぶれた、というケースもあるので油断は禁物。
 なお、かぶれないヘアカラー剤として「ヘナ」が注目されていますが、ヘナ100%のものは本来赤っぽい色に染まります。「茶ヘナ」「黒ヘナ」として出回っているものはヘナ100%とは限らず、かぶれないと思って使ったらかぶれてしまった、ということもありうるので注意しましょう。


安易にうけて後悔!?アートメイクのリスク

 カラーといえば、皮下に色素を入れる「アートメイク」も今、若い女性を中心に人気。「タトゥーは一生残っちゃうけど、アートメイクなら数年で消えるっていうし・・・」と気軽に受ける人が増えています。でもちょっと待って!「アートメイクでもタトゥーでも、入れる色素は同じ。皮膚の深い部分に入れるか、浅い部分に入れるかの違いだけです」(岡村先生)浅く入れれば確かに、皮膚のターンオーバーに伴ってだんだん薄くなっていきますが、問題なのは入れる色素に混ざっている金属や不純物でかぶれるリスクがあるということ。
 また、タトゥーのことを<刺青>ともいうように、黒や茶のような暗い色素を皮膚の深い部分に入れると、光の反射で青く見えます。これは「チンダル現象」といわれ、ここまで深く入れるとまず除去は不可能。アートメイクだからと安心していたら、施術する人の技術の問題でチンダル現象を起こし、眉が青くなったというケースもあるそう。
 アートメイク自体がいけないという訳ではないが、かぶれのリスクを知った上で、技術は問題ないか、アフターケアは万全か、という面で厳しくチェックすることが大切、というのが先生からのアドバイスです。

トンデモ事件簿その2/異国deアートメイク事件
アートメイク発祥の地といわれているアジアの某国を旅行中、安いから♪という理由で眉のアートメイクを受けたC子さん。終わって鏡を見たら・・・ギャギャ、そこには黒々極太、かつてのブルックシールズを超えて「タケちゃんマン」と化した眉が!(注:某国の基準では美眉)帰国後皮膚科に泣きついたC子さんでしたが、皮膚科医から「除去するにはレーザーを照射しますが、レーザーは黒い色に反応するため、眉毛も抜けますよ」と宣告。結局タケちゃんマン眉も嫌だが眉毛がないのはもっと嫌だとそのままに・・・。「アフターケアの受けようもない海外でのプチ整形は本当に危険。安価だからと飛びつくのは論外です」(岡村先生)


「こする洗顔」はメラニンを肌に埋め込む!?

 少し前に口コミでブレイクした「眼鏡拭き」。これで洗顔すると肌がすべすべになるという評判でしたが・・・。「日本人の肌は基本的に、こすってはいけないんです」と先生はキッパリ。
 「皮膚をこすると、せっかくターンオーバーで表皮近くまであがってきたメラニンが、表皮より下に落ちこんでしまうのです。こうなると再び上昇するのに時間がかかり、慢性的なシミの原因になります。」(岡村先生)これは“擦過性色素沈着(フリクションメラノーシス)”と呼ばれる状態で、もともとメラニンの少ない白色人種や、メラニンが多いために落ち込んでも目立たない黒色人種には起こりにくいもの。
 「以前、ナイロンタオルで身体をこすったら黒くなったということが問題になりましたが、さすがにナイロンタオルで顔をこすらなくても、柔らかい布ならいいだろう、と思っている人が多いようです。でも、モノは何であれ肌をこするのは刺激になるのでNG。洗顔は泡を立てて包み込んで洗うのが一番です。」(岡村先生)

トンデモ事件簿その3/なんちゃってピーリング事件
岡村先生が家族で温泉旅行したときの話。「温泉旅館って、よく大浴場の脱衣場に、化粧品や、つぼグッズなどのサンプルが置いてありますよね。その旅館には「ピーリング」と称して、つけてこするとポロポロと余分な角質が取れてツルツルになる、とうたった化粧品があったんです。ピンときた私は、机の上にその化粧品をつけてこすってみました。すると案の定、ポロポロと消しゴムかすのようなものが出てきて・・・。つまり、その化粧品の主原料はポリマー(ゴム)で、肌につけてこすっても角質を落とすわけではなく、それ自身がかすになってポロポロ落ちることで、いかにもピーリングしたと見せかけた商品だった、というわけです。」


最後に−賢い消費者になろう!

 「コスメフリーク」、というと響きはいいのですが、「自分の顔を実験台にしてさまざまな物質を塗る」と言い換えると、さてどうでしょうか?もちろんしかるべき場所で販売されている化粧品は、人体への安全性が配慮されていますが、選び方や使い方によって消費者自らが、化粧品を有害なものにしてしまう、ということはないでしょうか?
 今は、インターネットなどで化粧品や美容整形などの、おしゃれに関する情報がすぐに手に入るのと同時に、知っておきたい肌トラブルについても以前より簡単に調べられます。危険性まで含めて「知る」ことで、いつまでも健康な肌でおしゃれを楽しめる「賢い消費者」になりましょう!

■取材協力/ 岡村皮フ科医院 院長 医学博士 岡村理栄子先生
東京女子医大卒業、同皮膚科研修後、米国エモリイ大学皮膚科留学。東京女子医大助手・講師を務め、岡村皮フ科医院開院。『おしゃれ障害』(少年写真新聞社)を編著。日本臨床皮膚科医会 学校保健推進委員会委員、東京都皮膚科医会副会長。
「おしゃれ障害」についてもっと知りたい方は…

『おしゃれ障害』(少年写真新聞社)1,900円
子ども向けに書かれた本ですが、症例写真も多く大人も参考に。

渡邉真由美 ) 

writer's eyes
バブルの時代に、やれディオールの青みピンクだの、ジバンシィのプリズムだのにフィーバーしていたギャル世代は、今や小〜中学生の子を持つ母。化粧品の売り手は全成分表示に代表されるような情報開示を進めているけれど、果たして消費者の意識はバブル時代から何か変化があったのでしょうか?
化粧の低年齢化が話題になっている今、「トラブルの連鎖」が起こらないことを願います。


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